「鍼して良かった。」「こんなによくなるとは思わなかった。」といった言葉をいただく機会も多く、いち鍼灸師としては非常に嬉しく思います。
しかし、よくなった場合でも、「忙しいから、、、」「少し良くなってきたから、、、」といった自己都合で通院回数を極端に減らしたり、長い期間来院されないといったこともよくあります。「悪くなったらまた来ます!」といったっきり、、、といった具合です。
実は、プライバシーの観点から、患者さんは他の患者さんの状況とご自身の状況を客観的に見比べてといったことは出来ません。そのため、自己判断で安易な方へ舵を切ってしまうことは少なくありません。
常日頃から「痛み」などの慢性疾患をみている立場から言えば、「症状改善に役立った方法(鍼であれば鍼)」を止めてよいことはありません。そのため鍼灸師の立場からは、「よくなってきたので、続けていきましょう。」というようにアドバイスしています。
副作用もほとんどない鍼療法に限っては、症状が改善されている場合に中止する必要性は全くありません。腎機能や肝機能に悪影響を及ぼすこともありません。とくに高齢の方で、不可逆的な変形など(変形性腰椎症など持病がある状態)があったりするような場合、改善されている状態を保つ努力をする必要性はあっても、(鍼療法だけではなく)治療自体を安易に中止することは避けるべきです。
多くの慢性疾患(とくに加齢による退行性病変)による「痛み」などは、鍼療法によって症状が抑えられているだけなのです。なぜなら加齢による変形は戻っていません。当然、ケアを継続する必要があります。
しかし、残念ながら全ての方が耳を傾けてくれるわけではありません。のど元過ぎれば熱さを忘れるではありませんが、、、結果として、治療計画から脱落し、再度悪化してから来院されるという方も少なくありません。
「痛みがとれた=無理してもいい」「状態がよくなった=ケアは不要」というわけではありません。良いと感じたのであれば、その状態を保つために、継続していくべきだと考えてください。そして、継続することによって、良い状態を保つことこそ、大病を未然に防ぐ第一歩となるはずです。
良いことは継続するべきです。適切な生活習慣で健康を取り戻した人が、少しのあいだ健康になったからと言って、「不摂生」な状態に戻って健康を維持できるでしょうか?ダイエットと同じようにリバウンドが待っているだけです。
若い人が筋力トレーニングを行って、筋骨隆々の体を作り上げても、数か月トレーニングから離れれば、もとの状態にもどってしまうはずです。高齢の方であれば、「良くなるまでの時間(痛みなどの軽減)は更に長く、悪くなるまでの時間(痛みなどが戻ってくる状態)は更に短い」と言えます。
鍼療法で症状が改善傾向にある、または改善された場合は、出来るかぎり継続してください。ケアの観点からみると、非常に有効です。
また、最新の研究では、「痛みは脳に記憶されて、消えない痛みとして残ることがある」そうです。出来る限り痛みのない生活を送りましょう。