冷やした方がよいか?温めた方がよいか?
よくあることですが、「冷やした方がよいか?」「温めた方がよいか?」といった質問をされます。
基本的には鍼灸院に来られる疾患の方は慢性疾患が多く、既往歴であれば「変形性腰椎症(すべり症・脊柱管狭窄症・腰部ヘルニアなど)」「五十肩(肩関節周囲炎・石灰沈着性腱板円)」「変形性膝関節症」などがあり、すでにかかりつけ医の先生から診断が下っている場合がほとんどです。
出血や発熱などがある場合や捻挫・打撲のような外傷の急性期(2~3日)であれば冷やす必要性がありますが、慢性疾患の場合は、出血や発熱(腫脹)などもないため、冷やす必要はありません。むしろ温める必要があります。
急性外傷はなぜ冷やすのか?
打撲や捻挫によって、出血や炎症が起きると、どんどん患部が腫れていきます。この出血や炎症を抑える目的で「RISE(ライス)」という処置を行います。
RICEとは?:
・R(Rest):安静
・I(Icing):アイシング・冷やす
・C(Compression):圧迫
・E(Elevasion):挙上
RICEには以下の目的があります。安静にすることによって、不必要な出血を誘発しない。冷やすことによって毛細血管が収縮し、不必要な出血や炎症がおきない。圧迫することによって、不必要な出血が起きない。患部を心臓の位置よりも上に挙上することによって重力で流れてくる血液を阻止し、不必要に腫れさせない。
受傷2~3日以降は原則「冷やしちゃだめ」
急性外傷の時期は2~3日と短く、一般的に受傷直後以外に「冷やす必要はありません。」むしろ、「冷やす」ことを続けると、血流が悪くなります。血行不良になると痛みは取れにくくなり、痛みが増強する要因となります(むしろ禁忌)。
血行障害に陥った患部は、栄養が十分にされず、「痛みの物質」が産生されます。この「痛みの物質」がさらに血行障害を悪化させて、更なる「痛みの悪循環」を生むために「痛み」が残るのです。
そのため、患部を栄養し症状を改善(回復促進)をするためには、温めなければいけません。とくに「変形性腰椎症(すべり症・脊柱管狭窄症・腰部ヘルニアなど)」「五十肩(肩関節周囲炎・石灰沈着性腱板円)」「変形性膝関節症」などの慢性疾患の場合は、上記の理由のとおり、温めることが重要です。
神経痛など神経症状があるときには「温めること」が大事
神経は圧迫や寒さに弱い組織です。冬寒い時に外出したりすると指がかじかんだりしませか?これは血行不良によっておこる神経症状です。指が動かしづらくなったり、痛みが出たり、感覚が麻痺したり、、、こういった症状がでるはずです。
神経症状を伴うような場合、例えば変形性腰椎症から坐骨神経痛(ふくらはぎなどの痺れや痛み、向うずねの痺れや痛みなど)を伴うような場合、冷やすということは絶対にありません。血行不良によって「かじかんだ手」を更に冷やして痛みは取れるでしょうか?それと同じように、「血行不良」が起きている場合は「温める」ことが大事なのです。
鍼は血流改善し、組織の回復促進や痛みを軽減する
人体に鍼を刺すと、皮膚表面に発赤(フレア)が出てきます。「軸索反射(じくさくはんしゃ)」といって、血流改善が起きているサインです。もちろん表面だけではなく、鍼先が届いている深部まで血流が改善しています。
血流が改善すると、組織が栄養されて回復が促進します。また、血行不良によって「痛みの物質」が局所に停滞し「痛み」を持続的に引き起こしている場合でも、鍼によって血流が改善することによって「痛みの物質」が消失し、「痛み」が軽減していきます。
その他に、鍼によって「鎮痛物質(内因性オピオイド)」が脳から放出されて「鎮痛作用」が現れたりと、複雑な反応がおこり「痛み」が消えていきます。
鍼をした後、人によっては「体がポカポカする」といった反応が出ます。これも血流改善などの作用によって体が温まっている証拠です。
温シップも冷シップも気にしなくていい
温シップや冷シップにこだわる方がいますが、シップの本来の目的は、温めることや冷やすことではなく、薬を皮膚表面から効かすことが目的です。鎮痛剤であれば、飲み薬も塗り薬も貼り薬(しっぷ)も薬効が同じであれば同じものです。貼った際に「温かく感じるから、、、温めている!」「冷たく感じるから、、、冷ましている!」わけではありません。
温シップであればカプサイシン、冷シップであればメントールが皮膚を通じて「あったかい」「つめたい」といった感覚を感じされているだけで、体温が上がったり下がったりしているわけではありません。
シップは病院で処方してもらいましょう
鍼灸院や整骨院でシップを販売している場合がありますが、施術所で販売されているシップ類には薬効を含みません。「すぅー」っとしたとしてもそれはメントールのリラックス効果(気分の問題)で薬効ではありません。
痛みを取りたい(鎮痛目的)などの場合は、適切な医療機関を受診し、医師から処方していただいたシップを使用しましょう。
最後に
打撲・捻挫など外傷の場合、急性期(2~3日)はしっかり冷やしましょう。それ以外、とくに慢性疾患に伴う痛みや痺れの場合はしっかり温めましょう。もちろん鍼もおすすめです。