よくあることですが、保険医療機関(病院やクリニック)に行って、薬物療法や運動療法で効果がない。次は、整骨院に行って、徒手療法をうけて、電気を流して、、、最後に鍼灸でも、、、という流れで当院に来られる方はいます。
数日や1~2週間での新鮮例(持病の○○痛の再発などは含まない)は少なく、持病の膝関節症が悪化した、、、であったり、持病の腰痛が悪化した、、、と言った例が多い印象ですが、保険適応に関して、首を傾げたくなる事例があります。
例えば、、、「整骨院に数ヶ月通っていて、保険適応なのですが、鍼灸で保険併用できますか?」、、、または「整骨院の保険を鍼灸に切り替えたいのですが、、、」といった内容です。
陳旧性の慢性疾患に、整骨院で数ヶ月も保険適応?、、、は本来は出来ないのです。
保険に関するあれこれ
周知の事実だと思いますが、病院など保険医療機関では原則保険適応です。しかし、当院のような「鍼灸院」や「整骨院」は原則自費で、保険適応範囲(療養費)には大きな制限があります。また、「鍼灸」「按摩マッサージ指圧(以下、マッサージ)」「整骨」では個々の保険適応範囲が異なります。
主な違い
1)鍼灸:慢性疾患(腰痛症、神経痛、五十肩など特定6傷病)
2)マッサージ:筋萎縮、筋麻痺
3)整骨および接骨:急性外傷(打撲、捻挫、骨折、脱臼など)
上記のように、きっちりと住み分けがなされています。そのため、「鍼灸」でも「マッサージ」でも「整骨」でも同じ部位や同じ傷病に重複した保険利用は出来ません(保険同時利用には矛盾があると思いませんか?)。
慢性疾患と急性外傷の大きな違い
慢性疾患と急性外傷は大きな違いがあります。一番大きな違いは、「罹患期間」や「発症原因」です。
1)慢性疾患:
以前から患っていた持病の悪化など陳旧性のもの
加齢によって発症した疾患など
2)急性外傷:
転倒や落下、接触などを起因とする明らかな外傷
発症から数日~2週間以内のもの
このような場合は?
例)交通事故で頸椎捻挫(むちうち)を起こしたような場合:
解説:急性期・亜急性期の2週間以内は、整骨でも急性外傷として保険利用可能ですが、持続する慢性的な頚部痛などは「頸椎捻挫後遺症」となり、鍼灸のみ保険適応となります。もちろん鍼灸の保険を適応して「徒手のみによる症状改善(徒手療法)」などを行うことは違法です。
例)スキーで転倒して足を捻った場合(捻挫):
解説:急性期・亜急性期の2週間以内は、整骨で保険利用可能です。鍼灸に関しては、特定6傷病にふくまれないため一般的には保険利用不可です。自
例)持病の腰椎すべり症の悪化に伴う腰痛:
解説:すべり症と整形外科で診断されている場合、これは陳旧性の慢性傷病となります。転倒などによる腰椎捻挫など新鮮外傷ではありません。そのため整骨での保険利用は不可です。鍼灸のみ保険利用可能となります。
例)単なる肩こりや疲労による腰痛
解説:保険適応範囲外です。
慰安マッサージへの不正な保険適応
例)○○疾患へのマッサージ:
解説:マッサージはマッサージ師しかできません。また保険利用は筋萎縮・筋麻痺のみとなります。鍼灸師(鍼灸の先生)、柔道整復師(整骨の先生)免許では保険利用によるマッサージは行えません。業務独占のため他業種は「マッサージをします。」とも言えません。
白紙の申請書にサインはしないように
上記のとおり、「同一部位の同一の急性外傷」に対し、数ヶ月に渡って保険利用できるような制度は現行法上にはありません。
受領委任といって、整骨や鍼灸の窓口では「サイン」と「一部負担金」を支払うだけで、施術を受けることができます(鍼灸は一部保険組合のみ)。もし、白紙の申請書にサインをしている場合は、いますぐそういうことは止めて、今後は内容を確認してからサインをするようにしましょう。そして、保険者や組合から確認の電話や手紙がくるようであれば、今一度ご自身で心当たりがないか確認をして下さい。
この「サイン」は「利用している患者さんご自身の自著」です。もし、不正請求であった場合、知らぬ存ぜぬでは通りません。「内容を確認しても分からないから、、、(確認はしない)」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、仮に内容がわからないのであれば、わからないものにサインはしてはいけません。
こういった白紙申請書へのサインはしないように、業界団体から適切な指導がなされているはずです。もし目にした場合は、けっして患者さんの手間を省くためにやってくれている親切とは限りません。断る勇気も持ちましょう。知らず知らずに不正に加担するようなことはしないようにしましょう。
余談ですが、、、
鍼灸や鍼灸や整骨は「整体(慰安マッサージ)」ではありません、、、保険で「整体」を受けることは当然できません。もちろん「骨盤矯正」や「○○矯正」も整復術ではないので、「保険適応外」です。
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