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コリの正体と鍼の鎮痛メカニズム


コリの正体

「コリ(筋硬結)」はどんなイメージでしょうか?筋肉自体にコリコリしたものがあるから「コリ」と呼ぶのかどうかはわかりませんが、「筋肉の一部が固くなっている」状態のイメージだと思います。


筋肉はスジ状の筋繊維が束になったものです。筋繊維の束は筋膜に包まれているため、バラバラになることはありません。この筋繊維一本一本が柔らかく伸び縮みすることによって、円滑な運動を行うことができます。逆に言うと、筋繊維が一本でも固くなってしまうと、筋肉自体の伸び縮みが上手くいかなくなったり(運動時痛、可動域制限)、固くなった部分の緊張状態が続くと虚血状態となってしまい痛みを感じやすくなってしまいます(痛みの悪循環、疼痛閾値の低下:痛みを感じやすくなる)。


固くなった筋繊維は、豆粒状のコリであったり、柵状(弦のような)のコリとして触知することができます。緊張が強い場合は痙攣(spasm)や持続的な筋収縮を伴うため、筋肉が小刻みに震えたり、スジ上に筋肉が浮き出たりといった現象を外から観察することができます。観察ができない場合でも、指などで圧迫することによって虚血状態を一時的につくると、痙攣や筋収縮を観察することができます(局所単収縮反応:LTR)。そのほかに、按圧によって遠隔部(おもに痛いところ)に痛みが再現される場合もあります(トリガーポイント:TP)。鍼灸師は、こういった現象を確認することによってトリガーポイントを同定し、鍼刺激によってコリを解消しているわけです。


参考)トリガーポイント按圧によるLTRの発現:

https://www.youtube.com/watch?v=CvSGm0nESaQ

鍼の作用

鍼でコリを刺激すると、按圧した時のように局所単収縮反応(筋肉がビクッっと動く)が起きます。この反応は、「コリにちゃんと鍼が適切に当たっているよ(治療効果の目安)」というサインです。この反応が起こっている間は鍼刺激を継続し、反応がみられなくなるまで刺激を繰り返します。もちろん、人によっては「痛い」と感じる場合もあるため、場合によっては休みをいれたり、次回の施術に持ち越したりと刺激量をコントロールします。


参考)鍼によるLTR:

https://www.youtube.com/watch?v=a2PgLfO7vDg


また、鍼刺激を受けた場所は軸索反射(血管拡張、血流改善)がおき、局所の血流量が改善されます。血流量が改善すると、慢性的な虚血によって引き起こされていた痛みの悪循環が解消されて、痛みの物質が除去されていきます。


参考)軸索反射のメカニズム:

https://www.youtube.com/watch?v=7n-Gm1TefTg


さいごに

鍼は筋由来の痛みに対して非常に効果的です。昨今、アメリカでは理学療法士に対して、鍼灸鍼を用いたドライニ―ドリング(西洋医学的鍼施術方法)の使用が許可されるようになりました。鍼は副作用がなく、深部まで刺激することが可能です。興味のある方はぜひ試してみてはいかがでしょうか?慢性的な肩こりや、それに伴う緊張型頭痛にも効果的です。





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