「電気を流す」「パルスをする」と言っても、単に電気を流すだけではなく、さまざまな目的を持って電気を流しているはずです。特に、鍼灸整骨院など、現代的治療をおこなっている所に通った経験がある利用者さんは、「鍼灸=電気・パルス」と言ったことを連想するかもしれません。
鍼灸鍼を電極として使用する目的はたくさんあります。例えば、「鍼灸鍼は電極として優れている」とか「刺激量の調整が簡単」だとか「筋肉を他動的に動かせる」などの利点があります。
「電極」ですが、人間の体に電気を流す場合、表面から流してしまうと、皮膚がアースの代わりとなってしまい、うまく電気が伝わりません。表面の皮膚に対して電気を流したい場合はよいですが、皮膚から深くなれば深くなるだけ必要な電気量が必要となっていきます。通電のパワーを上げていくと、皮膚表面を流れる電気で「痛み」が誘発されてきますので、皮膚表面から深層の筋肉などに電気を流すことは事実上不可能となります。鍼灸鍼を目的の筋肉に刺入できれば、通電時の皮膚上の痛みもなく、一定量の電気を目的筋に伝えることができます。これが第一の利点です。
「調整」ですが、必要な刺激量にあわせて、電気の出力を上げ下げすることが出来ますので、利用者さんや手技手法に合わせた刺激が行えます。例えば、「鍼麻酔」では、常に「強刺激」が必要ですので、人間の手では適切な刺激を常にキープすることはできません。代わりにパルス機器を使用することによって、誰にでも「鍼麻酔」を行うことが可能となります。また、昨今の研究では、通電頻度によって選択的に内因性オピオイド(脳内モルヒネ)を分泌することが可能ということですので、そういった面でもパルス機器は必要不可欠といえます。その他に、局所的な痛みを瞬時に取る場合(通電中のみ)、「TENS(経皮的電気刺激)」などを用います、この時は高頻度の通電が必要ですので、人間の手では不可能です。
「筋収縮」ですが、目的筋に鍼灸鍼を刺入して通電すると、筋肉が他動的に収縮します。ポンプのように「収縮→弛緩」をくりかえします。ふくらはぎなどに通電すると血流を循環させる作用を発揮するため、全身のむくみが取れたりします。鍼を局所に刺すと、血流量が上がりますが、さらにポンプとして作用させる場合はパルス機器が必要不可欠となります。手で筋肉を揉むよりも効果が高いです。
以上のことを考えながら治療を受けるのも一つの楽しみになるかもしれません。