パーキンソン病と似て非なるパーキンソン症候群と鍼療法


パーキンソン病とパーキンソン症候群

パーキンソン病は、主に一側の手足の震えから発症し、同側の手足、そして反対側へと症状が進んでいきます。指定難病でもある神経変性疾患で、主な発症原因は加齢だと言われています。パーキンソン病の諸症状は、脳のドパミン神経細胞の減少によるものです。また、運動器症状以外にも、精神症状(抑うつ、不眠など)や自律神経症状(便秘、頻尿、起立性低血圧など)が出現します。治療は主に薬物療法で、最初の5年程度(ハネムーン期)はレポドパ製剤が著効する印象です。


じつは、このパーキンソン病に似ているもので、パーキンソン症候群(パーキンソンニズム)というものが存在します。パーキンソン症候群とはパーキンソン病に似た症状を持つ疾患の総称です。パーキンソン症候群には、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、脳血管の病気、薬剤性パーキンソニズムなどがあります。手足の震えや緩慢な動作などは似ていますが、パーキンソン病とは違いドパミン神経細胞の異常によって諸症状が引き起こされているわけではありません。そのため、ドパミン製剤はあまり効果がないと言われています。


パーキンソン症候群の治療内容は、個々の疾患によって異なります。また、パーキンソン病によく似た進行性核上性麻痺(PSP)や多系統萎縮症(MSA)ではレポドパ製剤が効かないことが多いため、薬物による対症療法と運動療法が基本となります。そして厄介なことに進行性です。PSPは眼球運動制限(下方が見れない)や姿勢反射によって後方転倒を起こしたり、嚥下障害によって肺炎を起こしやすくなります。MSAでは、起立性低血圧や頻尿などの自律神経症状や酩酊用歩行などの小脳症状、そして嚥下障害による肺炎や睡眠時無呼吸を起こしやすくなります。PSPでおよそ5年、MSAでおよそ8年でねたきりとなる場合が多いといわれています。


パーキンソン症候群

1)神経変性症

  1. 多系統萎縮症

  2. 進行性核上性麻痺

  3. 大脳皮質基底核変性症

2)その他

  1. 薬剤性パーキンソニズム

  2. 脳血管性パーキンソニズム

  3. 正常圧水頭症


鍼療法併用のすすめ

鍼も物理療法の一つとして早期から取り入れることをおすすめしています。鍼療法に限らず、進行する神経変性症へのアプローチの基本は日常生活動作(ADL)の維持し生活の質(QOL)の改善です。患者さん個々によって症状や程度はかわりますが、原則は変わりません。進行を遅らせることが目的であり、進行してしまった状態から元通りになるということはありません。そのため、ケアもなるべく早くから行うほうがよいわけです。とくに、早期からの「質的、量的なケア」が重要です。


考え方や取り組み方の提案:

  • ✖ 私に限って悪くなるはずがないだろう

  • ✖ 悪くなってから多くの治療方法に取り組めばよいだろう

  • ✖ 悪くなってから質の良い治療方法を選べば症状は改善するだろう

  • ✖ 安定しているから悪くならないだろう

  • 〇 出来ることをやってなるべく悪くしない

  • 〇 質の良いケアによって元気な時間をより長くさせる

  • 〇 安定していても慢心せずしっかり取り組む


鍼療法のメリットは副作用がほとんどないことです。また、レポドパ製剤や他剤の効果を抑制するということもありません。鍼療法では、①神経幹刺激による運動機能の調節、②全身調整による自律神経の調節、③頭頚部への刺激による脳血流量の調節、④筋肉の過緊張やそれに伴う痛みの緩和などを行います。鍼による相乗効果が得られれば、薬による副作用リスクの軽減が期待できます。とくに効果よりも副作用が気になる方にとって、鍼は良い選択肢の一つとなるはずです。もちろん、薬物療法だけではなく、運動療法とも相性がよく相乗効果が期待できます。


症状悪化後の改善は困難

MSAなどの相談を受けた後、数年経過してやっぱり鍼を試したいと来院されるケースがあります。とくに、最後の手段として、、、といった形です。鍼療法は東洋医学にカテゴライズされているため、あたかも西洋医学とはまるで別のもの、人によっては魔法のように感じる方もいらっしゃるはずです。しかし、症状が進行している場合は鍼に限らず改善が難しい場合が多い印象です。


そのため、悪化してから鍼でもリハビリでも何でもすればよいという考えもあまりおすすめしていません。進行すると患者さんだけではなく、患者さん家族の負担も増えていきます。PSPやMSAの場合は思ったよりも進行が速い、思ったよりも介助が大変だということが起こります。


明確な治療方法が確立されていないから、、、鍼で治る保証がないから、、、という理由だけで早期からのケアに懐疑的な方もいらっしゃいます。しかし、鍼に限らずPSPやMSAに対して(対症療法が基本のため)明確な”治る”治療方法はありません。また、一度も鍼を受けたことがない場合、「鍼は痛い、、、怖い、、、」というイメージから敬遠しがちですが、他になかなか方法がない場合は一度試してみるのも一つです。


さいごに

進行性の神経変性症は、早期からのケアが重要です。病状を進行させない、出来れば少しでも改善させる(治すという意味ではない)ことが大切です。


パーキンソン病でもレポドパ製剤があればよいというわけでもなく、人によっては早期から薬が効きづらくなったり、副作用が出たりすることもあります。一般的に、震顫(ふるえ)を主症状とせず筋固縮が強く出るタイプの場合は進行が早いと言われています。


鍼施術のメリットは他療法との併用が可能なこと、そして副作用がほとんどないことです。また、薬物療法や運動療法ともまた違ったアプローチであり、作用機序も違うため相乗効果が期待できます。

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