パーキンソン病と流涎
パーキンソン病では一定の割合で流涎(よだれが垂れてくる)が起こります。筋緊張(や麻痺)による嚥下機能(飲み込み能力)の低下や頚部前屈(姿勢異常によって首から頭にかけて前に傾いている)、唾液分泌を促す薬剤(ドネペジルなど)による副作用などが関係しているのではないかと言われています。流涎は患者さんのADLを低下させるだけではなく、衛生面への配慮など様々な困難をもたらします。
薬剤の副作用によって流涎が起きている場合は、薬剤の変更や調整によって症状をコントロールすることが最優先です。しかし、何らかの理由で薬剤調整が難しい場合や、姿勢異常、筋緊張の亢進(緊張状態で上手く動かせない)による嚥下不利による唾液貯留(流涎)は、運動療法や鍼療法なども選択肢の一つとなります。症状の進行や状況に合わせて、薬物療法だけではなく様々な療法を組み合わせることが重要となります。
鍼療法と流涎
鍼療法に関して様々な施術方法がありますが、流涎に対しては、加減配穴(症状によって追加するツボ)として「廉泉穴(れんせん)」を使います。このツボは顎の下にあり、喉と顎先の間あたりに位置しています。症状に合わせて喉の方向であったり、舌の根元の方向に鍼を刺入していきます。
鍼先が目的の部位に到達したあと、手技を行い、鍼感(ひびき)が喉や舌根に届くようにします。施術中は患者さんに確認を行いながら鍼をし、鍼感を確認したのち、留鍼または抜鍼をします。
鍼の効果として、緊張緩和や疲労物質の除去などがあり、鍼後に筋肉の運動自体がスムーズになると、嚥下自体がしやすくなり、自然と流涎回数や量が減少します。体質や状態によっても異なりますが、改善がみられる場合は、継続して施術を希望される方がほとんどです。
さいごに
パーキンソン病の病態は様々ですが、鍼療法も症状改善の一助となることがわかっています。鍼療法では、廉泉への刺鍼だけではなく、全身調節の鍼施術(当院では三焦鍼法(さんしょうしんぽう))を行うことによって、症状緩和とADL改善を目指す方法がおすすめです。早期から鍼施術を取り入れることによって相乗効果も期待できます。