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ベル麻痺は80%自然治癒する、残された20%は自然治癒しない

当院では、ベル麻痺を含む末梢性顔面神経麻痺の受入れ対応をしています。最近は、予後予測の話を中心に記事にしていましたが、今回は「ベル麻痺は80%自然治癒する」という話を中心にまとめました。


関連記事:

末梢性顔面神経麻痺の重症度と予後予測 (sanshou-hari.com)

末梢性顔面神経麻痺の重症度を経過時間から推測する (sanshou-hari.com)


ベル麻痺は、80%程度自然治癒(短期ステロイド治療含む)すると言われています。そのため、ほとんどの方は医療機関でのステロイド治療後一ヶ月程度で治癒すると言われています。よく耳にする「ベル麻痺ですね。すぐよく治りますよ」「ベル麻痺ですね。ほっといても自然治癒しますよ」という情報はあながち噓ではありません。しかし、本当に軽症であれば、、、という確認が必要です。


正確な予後予測・予後判定にはEnog検査という電気生理学検査が必要であると以前の記事にも書きましたが、すべての方がEnog検査を受けているわけではありません。発症が一ヶ月、二か月と経過をして「あれ、、、なかなかよくならないぞ」という場合、もしかしたら軽症ではない可能性が高くなります。


80%は自然治癒するわけですが、これは、ベル麻痺全体の数字であって、経過が思わしくない方のうち80%が自然治癒するということではありません。残念ながら、経過が思わしくない場合、重症例では自然治癒での完治は難しく、ほとんどの場合で後遺症が必発です(神経が高度に損傷している)。また、中等症であっても治癒には時間がかかり、後遺症の可能性が高くなります(神経が部分的に損傷している)。そのため、80%は自然治癒するとは安易に考えずに、20%は麻痺は治らず後遺症が残存するということを念頭に置く必要があります。


ポイント

  1. 経過が思わしくない場合は、自然治癒例80%に入っていない可能性が高い

  2. 軽症例以外は後遺症の可能性が高い

  3. 軽症例以外は治癒したとしてもある程度の時間が掛かる


数か月を超えて経過が思わしくない場合は、積極的な鍼治療の検討をおすすめしています。ただし、神経損傷の程度、後遺症の程度に応じてある程度の治療回数は必要となります。また、発症から経過した時間と治癒力は反比例するため、陳旧例の方がより忍耐が必要となります。鍼治療だから特別時間が掛かるというわけではありません。


一年を経過して全く変化がない症例でも、鍼治療とセルフケア(ストレッチ、マッサージ)を継続することによって徐々に回復してくる症例もあります。もし鍼治療を試していないようであればぜひ検討をしてみて下さい。鍼治療に関する記事を下記に載せています。難治例でも鍼治療は有効であるといったものです。よろしければぜひご一読下さい。


関連した研究の紹介:

  • 難治性のBell麻痺およびHunt症候群に対する鍼治療効果の検討

ENoG(誘発筋電図検査)最低値0%でかつNET(神経興奮性検査)スケールアウトであった29例(Bell麻痺14例,Hunt症候群15例)に対して鍼治療を行い、効果判定には麻痺スコアと西本・村田らの考案した後遺症評価法の変法による後遺症スコアを用いた。発症6カ月以内に麻痺スコアが36点以上となり,明らかな後遺症を認めないものを完全治癒,それ以外のものを不完全治癒として評価した結果,完全治癒は5例(17.2%),不完全治癒は24例(82.8%)であった。ENoG最低値0%の場合,発症6カ月以内の治癒は見込めないとされており,結果からは鍼治療の有効性が示唆された。(要旨より抜粋)

参考文献:蛯子 慶三, 丹波 さ織, 吉川 信, et al. 難治性のBell麻痺およびHunt症候群に対する鍼治療効果の検討[J]. 日本東洋医学雑誌-, 2009. 60(3)



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