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五十肩は早いうちからのケアが重要。とくに年齢の高い方は要注意。

更新日:2022年5月25日

五十肩

突然肩が痛み出し、しまいには腕が挙がらなくなってしまう「五十肩(病名:肩関節周囲炎)」。固まってしまうことから「凍結肩(Frozen shoulder)」とも言います。


一般的には、数ヶ月から数年で自然治癒することが多いと言われていますが、痛みをかばって動かさなかったり、放置したりすると「関節拘縮(関節が動かなくなる)」をきたす可能性があります。


関節拘縮をきたすと生活の質が下がり、場合によっては後遺症が残ってしまう可能性も少なくありません。とくに高齢の方の関節拘縮は頑固なため、なかなか大変な印象です。


関節拘縮に移行するかどうか?のポイント

関節拘縮に関する研究報告があるため、紹介いたします。


水出ら(2012)による後ろ向き研究では、関節拘縮に移行した群(移行群)と移行しなかった群(非移行群)では、以下のポイントで差があることがわかりました。


アブストラクトから一部抜粋:

平均年齢は、非移行群 52.1 ± 9.6 歳に対し、移行群が 58.5 ± 6.8 歳で有意に高かっ た。

②初診時に明らかに拘縮のない症例に比べ、拘縮の有無が明確には判別できない症例に移行 群が有意に多かった(19% vs. 57%)。

③病変部位が限局した症例に比べ、病変部位が拡大あるいは判別が困難な症例に移行群が有意に多かった(17% vs. 50%)。

④夜間痛のない症例に比べ、夜間痛を有する症例に移行群が有意に多かった(15% vs. 64%)。

⑤非移行群に比べ、移行群は鍼治療による疼痛や可動域制限の改善が得られにくかった


また、水出らは、以下のポイントによって関節拘縮が進展していくと考察しています。

関節拘縮の増悪因子:

①拘縮に移行していくと器質変化をおこし、治療効果は薄い。

②可動域制限があると、予防的運動療法が痛みによって行えない。

③痛い肩をかばうため、より動かさなくなる。


そのため、病変が軽度の段階から(鍼)治療を行うことが、症状改善と関節拘縮への移行を予防できるのではないか?としています。


鍼治療継続中に関節拘縮が明確になった肩関節周囲炎症例の特徴 | CiNii Research


論文からわかること

いちがいに「五十肩」と言っても、体質や症状によって予後は変わります。関節拘縮に移行するかどうか?によって予後は大きく変わってしまうと言えます。報告のとおり、年齢の高い方は関節拘縮をきたす可能性が比較的高いため、「若い頃に肩を痛めた時はすぐによくなった、、、」など、楽観的にみていると容易に関節拘縮に移行してしまうこともあるはずです。


そのため、病変を進展(症状悪化)させないように早期から適切な処置をしていくことが重要です。まず痛みがある場合は適切に対処し、運動療法などによって関節拘縮を予防することです。鍼灸は鎮痛作用や血行促進作用があるため、五十肩への治療には早期から鍼灸を取り入れることも重要です。


関節拘縮を伴っても、治療は継続しよう

関節拘縮を伴うと、痛みにや可動域制限による不便さのほかに、長い期間の治療介入が必要となります。可動域制限は一日二日で簡単に取れるものではありません。週単位で徐々に拡がっていくものです。


この期間は人によっては数か月、長い人では数年と掛かってしまいます。そのため、治療を途中で止めてしまう人も少なくありません。しかし放置してしまうと、「本当に固まった状態(後遺症)」になってしまうこともあるため、忍耐強く治療を続ける以外ありません。


おわりに

五十肩は、鍼灸の保険適応症となっています。中長期の鍼施術を受けても、負担はある程度抑えられるはずです。興味のある方は、お気軽にご相談ください。




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