坐骨神経痛に徒手療法よりも鍼をすすめる理由。保険適応範囲や解剖学の面からも鍼は有用。

更新日:2019年9月13日

鍼とマッサージは違うもの

誤解されやすいですが、鍼はマッサージとは違いますし、マッサージも鍼とは違います。当然ですが、鍼(灸)、マッサージ(あんま・指圧)、柔道整復(整骨・接骨・ほねつぎ)は全て違うものです。また、整体(骨盤矯正含む)・カイロなどは無資格ですので、国家資格とは別物です。


マッサージ・按摩・指圧は、その名前のとおり「圧す、摩る、揉む」の手技から成り立つ徒手療法です。一方、鍼灸は「鍼または灸」を用いた療法となります。前者は非侵襲性、後者は侵襲性の侵害刺激となります。性質の違いから保険適応症も異なります。


保険適応症

・按摩マッサージ指圧:

1)関節拘縮

2)筋麻痺


・鍼灸:

1)神経痛

2)リウマチ

3)五十肩

4)頸腕症候群

5)腰痛症

6)頸椎捻挫後遺症


補足事項:実際は、保険適応症のみに効果が限定されているわけではありません。


坐骨神経痛に鍼はどうか?

・適応範囲から考えると、、、

坐骨神経痛には柔道整復(整骨・接骨・ほねつぎ)がよいと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、柔道整復は「ほねつぎ」の名前のとおり、業務の主体は「骨折、脱臼、捻挫、打撲」などの「急性外傷」への徒手療法(整復術、後療法)となります。もちろん整復術や後療法は按摩マッサージ指圧ではありません。


そのため、先ほどの保険適応症のとおり、「神経痛」に対しては「病院」または「施術所(鍼)」のみ健康保険利用が可能となります。また、保険適応症となっているため、鍼灸では改善が期待できると考えられています。必然的に病院以外での選択肢は「鍼灸」が有力です。


・解剖学的に考えると、、、

坐骨神経痛は、主に変形性腰椎症(すべり症、脊柱管狭窄症、ヘルニアなど)や梨状筋(おしりの筋肉)の過緊張による絞扼(しめつけ)によって起きています。 何らかの理由で絞扼された神経は栄養不良(循環不全)となっています。この状態を改善することによって「痛みの軽減」や「運動障害の軽減」が可能となります。


坐骨神経は、人体最大の神経で、おもに腰部~臀部~下肢後面を走行しています。刺激方法としては、臀部の指標から坐骨神経を直接刺激する方法や、痛みの出ている部位(末梢の神経支配部位)を刺激する方法があります。刺激をすることによって、循環がよくなり症状が軽減していきます。


一般的に神経の走行部位は深部となっていて、坐骨神経も同様です。そのため、臀部から刺激する場合、鍼であれば75mmや90mm長の鍼を使用します。マッサージなど表面からの介達外力(伝わる力)では、痛みの出ている部位表面を刺激することは可能ですが、直接神経に刺激を送ることは難しいと言えます。


確かに、「手で触れること」は一定の満足感を与えやすいですが、本来の目的(症状改善)を考えれば、理論上は鍼の方が向いていることが分かります。そのほかに、ホットパックや経皮的電気刺激療法(表面からの電気)も深度の面から、徒手療法と同様で深部まで届くかどうか?疑問です。


神経近傍への鍼の感覚は?

神経近傍へ針先が到達すると、神経走行上に「痺れるような感覚(麻)」という「ひびき」が生じます。坐骨神経であれば、おしりから足の裏にかけてビリっとした感覚があるはずです。これは得気(de qi)と呼ばれるもので、刺激量の目安となります。一般的には「ひびかない場合は、効果がない(うすい)」と言われています。


また、神経近傍への刺鍼によって神経障害が出てしまうのではないか?と思われがちですが、鍼灸鍼の先端形状は丸く、動脈や神経を切り裂くことはありません。細さも髪の毛程度で、柔軟性があるため、人体への負担も少なく、深部の組織(坐骨神経など)を安全に刺激することが可能となっています。


最後に

坐骨神経痛には、痛み止め(NSAIDS:非ステロイド性消炎鎮痛剤など)や神経修復剤(メチコバラミン:ビタミンB12)が使用されています。副作用によって胃腸障害を起こしやすい場合や、相乗効果を期待する場合は、「鍼療法」もおすすめです。


神経の栄養不良状態を放置していると、より悪化し「痺れ」などが残存してしまうことがあります。そういったことも念頭に置きながら、治すことを目標にすることはもちろんのこと、ケアによる症状のコントロールも必要です。


興味のある方は、ぜひ鍼を試してみてはいかがでしょうか?

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