top of page

変形性腰椎症や変形性膝関節症などの年齢が原因となる退行性病変との上手な付き合い方。

近年では30歳代の鍼灸利用率も高まっているようですが、やはり60歳以上が多い印象です。実際、当院の患者層も平均は60歳後半となっています。


1.退行性病変=鍼灸臨床で多くみかける疾患

鍼灸で多くみる疾患は、高齢者層では、変形性腰椎症(ヘルニア、すべり症、脊柱管狭窄症など)や変形性膝関節症、五十肩などが多い印象です。じつは、変形性腰椎症や膝関節症は、一般的には(慢性)退行性病変と言われており、年齢と関係が深く、完治することはまれです。


2.退行性病変には保存療法が第一選択

一般的に退行性病変には、保存療法がとられます。これは対症療法といって、痛みがあれば痛みのケア(鎮痛剤、湿布薬、はりetc...)を行います。症状改善が見られない場合などは手術適用となる場合があります。


3.画像所見と痛みは一致しない

画像所見と痛みの程度は一致しないと言われています。変形が強い場合でも痛みがほとんどない場合や、変形があまりひどくない場合でも痛みが強い場合があります。


多くの場合は、局所の血流障害など機能障害を原因とするため、鍼灸や運動療法によって「痛みのケア」や「筋力強化による悪化防止」が可能でです。変形(器質的な問題)の改善ではなく、機能改善(血流増加、筋力増加、疼痛物質の消失)によって症状改善がみられます。


退行性病変への鍼灸療法も対症療法としての側面があり、報告では「痛みのケア」に効果的であると言われています。


4.鍼灸療法は痛みのケアに強い

鍼灸療法は、上記のとおり痛みのケアに用いられることが多々あります。副作用もなく、薬物療法が向いていない方でも適応となります。


鍼灸療法に関する研究は、「疼痛領域」が一番多く、鍼灸の「鎮痛」効果に対し、世界的に関心が高いことがわかります。


「慢性的な痛み」に対し、鍼灸は保険適応可能です(特定6傷病のみ)。もちろん変形性腰椎症(腰痛や神経痛で適応となる)や膝関節症(膝関節症は保険者判断によって)は一般的に適応範囲に含まれています。


自費鍼灸は制限はありませんが、保険鍼灸では以下の点で注意が必要です。

1)医師の同意書が必要(6ヶ月に1度)

2)同一疾患に対し、病院での併療不可

3)局所のみ

4)費用:1,540円~(10割)

5)償還払いか受領委任

参考:https://www.harikyu.or.jp/general/insurance.html


現行の医療制度では、保険医療機関(病院)での治療成績が著しくなく、鍼灸によって改善がみられる場合に保険利用するような仕組みになっています。


「なぜ自由に保険が利かないのか?」といったクレームをお受けすることがありますが、管轄である厚生労働労働省が決定している事項ですので、心苦しいですが、上記のとおりとなります。


上記の条件に適合する場合は、ぜひ保険鍼灸(または混合鍼灸)をご利用下さい。


5.加齢による疾患はほとんどの場合で完治しない

昨今では「根本治療専門」「根治を目指します」「当院では○○病治せます。」といったキーワードが街中やインターネットにあふれています。人間は誰しも「完治してほしい」といった欲求があります。


しかし、残念ながら加齢による疾患はほとんどのケースで完治しません。対症療法による症状軽減しか行えません。なぜなら誰も絶対的に若返ることが出来ないからです。


そのため、退行性病変に「根本治療」をしたからといって、治るわけではありません。「根治」を目指したからといって治るわけではありません。「○○病」が一般的に治るものであれば、体質や症状によって治ります。


「いつになったら完治するか?」と考えることはあまりおすすめしません。出来れば、「どのようにして困った症状をコントロールして生活の質を上げるか?」を考えてみて下さい。


人によっては週2回以上の鍼が必要な場合もあれば、2週間に1回でコントロールが効く方もいます。本当に体質や症状によってまちまちです。


6.まずは健康意識を高めること

「何とか治したい。何とか症状を改善したい」と言っていても「でも時間をとられたくない、、、」といった気持ちになることはありませんか?


1)病院で処方された薬を、自己判断で飲んだり飲まなかったり。。。

2)リハビリに通っていて、宿題(在宅でのトレーニング)が出てもこなせていない。。。

3)痛みが取れたから、若い頃のように無理して運動をしている。。。

4)鍼灸やリハビリの通院回数を自己都合で勝手に変えている。。。

5)治療目的で整体など無資格マッサージに切り替えた。。。


もし「なんで改善しないの?なんで悪くなるの?」と思った時、、、こういったことをしていないか一度考えてみて下さい。


ご自身が当事者です。まずは健康意識を高めていきましょう。


7.整骨院では慢性疾患に保険は効かない

はりきゅうは原則自費です。


当院では、慢性疾患に対し、保険鍼灸が可能であると判断した場合にかぎり、保険適応の手続き(医師の同意書取得など)をすすめていきます。もちろん特定6傷病(保険適応症)であっても、状況(病院での薬物療法が必要など)によってはお断りしています。


中には、「整骨院では医師の同意書は不要!」「腰痛でも何でも整骨院では保険が使えた!」とクレームをおっしゃる方がいらっしゃいます。


整骨院を利用されるのは自由ですが、以下の点にご留意下さい。


1)整骨院では急性外傷(捻挫・打撲など)以外は保険適応外

2)肩こり・腰痛など軽微な筋疲労では保険は適応されない

3)慢性退行性疾患は当然保険適応外

4)慰安マッサージは当然保険適応外


昨今では、健康保険療養費の不正請求が問題視されています。医療保険療養費利用(はりきゅう・あんま・整骨)の際は、不正に加担しないようにしましょう。書面上のサインは「患者さんご自身」のものとなっています。ご注意下さい。


最新記事

すべて表示

頚椎症に対する遠隔取穴の効果

頚椎症に対する「局所取穴」と「混合取穴(局所+遠隔)」の効果を比較した文献「不同远端取穴针刺治疗颈型颈椎病的临床随机对照试验(和訳:異なった遠隔取穴による頚型頚椎病に対する鍼治療のランダム化比較試験)」[1]を見かけたので読んでみました。...

麻痺に伴う代償運動が及ぼす影響

運動麻痺の回復期を過ぎた後、身体機能が悪化していくことがあります。とくに、不完全治癒の場合、加療を中断した後、一定期間が経つと運動機能の低下が生じ、中断時点よりもより悪くなる傾向にあります。その原因の一つが「代償運動(だいしょううんどう)」によるものです。...

五十肩と訴える症例の考察

何らかの原因によって肩関節周囲の軟部組織に炎症が生じると、激しい痛みが現れ 、夜間痛を伴うことがあります。炎症によって軟部組織に強い損傷が生じると、癒着等による肩関節の可動域制限や拘縮が生じると言われています。 これを、「五十肩(もちろん五十代以外でもなる)」や「肩関節周囲...

bottom of page