top of page

変形性膝関節症に対して、鍼灸治療をすると何故痛みが取れるのか?

変形性膝関節症で来院される患者さんは多いです。整形外科でのヒアルロン酸注射によって改善される場合が多いので、治療院に来られる方は少なくなっていると聞きますが、やはり多い印象です。中には、ヒアルロン酸を定期的に注射しているが、まったく変化なしという方もいます。

 

変形性膝関節症は、軟骨のすり減りや、関節の骨棘形成などで関節変形をきたす病気ですが、よく言われているのは、骨の変形度合いと痛みの程度は一致しないことが多いということです。巷では「軟骨のすり減りが~」と言われますが、実際は、軟骨自体には痛みを感じる神経はありません。最近は、関節周囲に存在する軟部組織の炎症が痛みの原因となっている場合が多いと言われています。

 

痛みの原因は、関節を取り巻く関節包、太ももの筋肉(大腿四頭筋や縫工筋)などの問題が考えられます。また、大腿四頭筋の靭帯(膝蓋靭帯)は膝蓋骨(膝かしら)を覆うようになっているため、動きが悪くなると痛みが出やすくなります。

 

鍼治療では、おもに膝周囲の軟部組織を中心に施術をしていきます。大腿四頭筋上にある梁丘(外側広筋)、血海(内側広筋)、鶴頂(膝蓋靭帯)や、関節裂隙上にある外膝眼や内膝眼、その他に、関節回りの足三里、陽陵泉、陰陵泉などに鍼をしていきます。痛みが強い部位には鍼の本数を増やしていきます。炎症が強くない場合は、遠赤外線治療器で温めてもよいでしょう。

 

鍼をすると、なぜ痛みが和らぐのでしょうか?まず、鍼施術によって局所の血流量が上がります。血流量が上昇すると、可動域が広がります。可動域が広がると、無理に動かす必要がなくなるため、動作時痛が少なくなります。また血流改善によって、痛みの物質が押し流されるため、痛みが和らいでいきます。一回一回ごとに痛みが徐々に薄れていく印象です。

 

注意点として、痛みが和らいでも、無理な運動や負荷は禁物です。関節の状況は、鍼施術では変わりません。そのため、痛みのコントロールとして通院される方が多いです。最初は週2回程度から始まり。週1回程度になっていくことが理想です。

 

当院では、鍼施術以外に、大腿四頭筋のストレッチ方法なども指導しています。「手術をすすめられているが、なかなか踏み切れない」「リハビリなどで電気を流したり、マッサージをしてもなかなか効果がでない」「痛み止めの湿布を貼っていてもなかなか痛みが取れない」など悩まれている場合は、一度鍼治療を試してみてはいかがでしょうか?鍼は薬などと併用が可能です。

 

当院は、自費診療のみとなっています。巷では、変形性膝関節症に保険が効くという話があり、問い合わせが多数あります。しかし、鍼灸院および整骨院(接骨院)では、変形性膝関節症は原則保険適用外です。慢性疾患のため、整骨院では保険利用不可となっています。また、鍼灸治療では、保険指定傷病のリスト自体に入っていません。整形外科など保険医療機関以外での治療は自費診療となります。ご了承ください。

最新記事

すべて表示

頚椎症に対する遠隔取穴の効果

頚椎症に対する「局所取穴」と「混合取穴(局所+遠隔)」の効果を比較した文献「不同远端取穴针刺治疗颈型颈椎病的临床随机对照试验(和訳:異なった遠隔取穴による頚型頚椎病に対する鍼治療のランダム化比較試験)」[1]を見かけたので読んでみました。...

麻痺に伴う代償運動が及ぼす影響

運動麻痺の回復期を過ぎた後、身体機能が悪化していくことがあります。とくに、不完全治癒の場合、加療を中断した後、一定期間が経つと運動機能の低下が生じ、中断時点よりもより悪くなる傾向にあります。その原因の一つが「代償運動(だいしょううんどう)」によるものです。...

五十肩と訴える症例の考察

何らかの原因によって肩関節周囲の軟部組織に炎症が生じると、激しい痛みが現れ 、夜間痛を伴うことがあります。炎症によって軟部組織に強い損傷が生じると、癒着等による肩関節の可動域制限や拘縮が生じると言われています。 これを、「五十肩(もちろん五十代以外でもなる)」や「肩関節周囲...

bottom of page