変形性関節症と治療のポイント
変形性腰椎症や変形性膝関節症の主な発症原因は加齢です。発症率・有病率は年齢とともに増加し、50歳以上に最も多くみられます。加齢による筋力低下や骨量減少によって関節にかかる負荷を支えきれなくなってしまうことが原因です。保存療法では、以下の要素が絶対的なポイントとなります。
治療のポイント:
痛みをとる
体重を減らす
筋力を増やす
痛みをとることによって生活の質(QOL)を向上させたり、日常生活動作(ADL)を改善したりすることができます。また、痛みは運動療法の妨げとなるため、まずは痛みをとることが優先されます。そして、痛みにあわせた運動を行いながら筋力を強化していきます。筋力強化によって関節への負荷が減れば改善していく傾向にあるはずですが、過重な体重をコントロールできなければ負荷は常に掛かり続けるため、痛みが繰り返したり徐々に悪化したりといったことにつながります。
毎日湿布を貼ったり、薬を飲む煩わしさはあるかもしれませんが、薬物療法や物理療法による痛みのケアは患者さんにとってはそこまでの負担にはなりません。しかし、筋力を増やす運動療法や体重を減らす栄養管理に関しては患者さん自身の頑張りや協力がどうしても必要不可欠です。
鍼に関して言えば、物理療法の一つとして「痛みのケア」に用いられています。鍼療法単独では「痛みをとる」ことしかできません。そのため、併せて運動療法(膝であればパテラセッティングなど)を指導したり、体重管理をお願いしたりします。痛みは取れてもすぐに再発する場合やなかなか痛みがとれづらい場合は、運動療法が適切に行えているか?体重管理が適切に行えているか?をみます。
なかには、「痛み止めを飲んでいるからこれでいいだろう、、、鍼をしているからこれでいいだろう、、、」といった理由で運動療法を行わなかったり、今までどおりの食生活を続けている方もいらっしゃいます。加齢に伴う変形性関節症は、変形した関節自体が元に戻ることはないため治ることはありません。逆を言うと、油断をしていると悪くなる一方ということです。維持するか悪くなるかだけなのです。
じつは、痛みをとることは再発の予防にはなりません。なぜなら、痛みを取っただけでは筋力や体重には変化が起きていないからです。「いまの状態で悪くなっているのだから根本的に身体を変えていかないと意味がないですよ。」ということです。虫歯の治療をせずに痛み止めを飲んでいても虫歯がよくならないことと同じ理屈です。
さいごに
ときに「医療従事者が患者さんを治している」と思われがちですが、実際は両者が一緒に協力をしながら治療や予防を行っているといった趣です。そのため、患者さんの協力が必要不可欠です。いくら医療従事者側がよい治療(または施術)を行っても、患者さんによる自己管理が適切に行われていなければ医療として成り立たず、目的を達成することが出来ません。通院コンプライアンス(しっかり通院する)や服薬コンプライアンス(しっかり薬を飲む)も同様です。ご自身の健康のために、出来ることからしっかり取り組んでみて下さい。