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天津中医薬大学といえば醒脳開竅法。短期研修のススメと取り組み方。

天津に留学していたとき、短期研修団の訪問をよくみかけました。実際に、通訳として参加したこともあります。そして、学部生時代には短期研修団として天津と北京で臨床見学をしたことがあります。日本とはまた違った環境、違った治療方法といった趣があります。中長期滞在は難しい方がほとんどだと思いますが、数日でもよいので実際に観てみることをおすすめします。今回は、「実際にどのようなことをやっているのか?」また、「どのように見学すると有意義か?」などの話を書いていきたいと思います。

 

まず、天津中医薬大学第一付属病院では、「醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)」という脳卒中後遺症など脳病に対する治療法が有名です。この特殊鍼法は天津中医薬大学第一付属病の石学勉院士によって1970年代に開発されました。発症後急性期からこの特殊鍼法にて治療介入を行います。VIP病棟には海外からの患者さんもいらっしゃいます。日本では後藤学園や牧田総合病院の鍼灸部門などが普及活動をしています。少し古いですが、関連書籍では『写真でみる脳血管障害の針灸治療』(東洋学術出版社)というものが出版されています。

 

天津中医薬大学には付属病院がいくつかありますが、臨床見学では、(旧)第一付属病院(北院)に配属されると思います。ここは旧キャンパス(新キャンパスは建設中)の隣にあり、学内から徒歩数分で到着します。第一付属病院の鍼灸科はおもに病棟と外来の二部にわかれています。病棟では主に急性期から回復期の脳卒中の患者さんを、外来では、回復期以降の患者さんを見学することになります。

 

「醒脳開竅法」は主に病棟で見る機会が多いと思います。というのも、外来に来られている患者さんに対してはあまり「教科書どおりの醒脳開竅法」は行いません。

 

例えば、「醒脳開竅法」のなかに四肢の運動麻痺を取るため(疏通経絡)、神経幹刺激を行うツボがあります。場所で言うと「三陰交(すねからふくらはぎに向かって、頚骨神経)」「委中(ひざうら、頚骨神経)」「極泉(わきのした、正中神経)」などです。しかし、急性期を過ぎると、痙性麻痺が起こり、反射が亢進しやすくなるため、上記のツボを刺激すると逆に痙性が進む場合があります。逆に、急性期などで弛緩性麻痺が起こっている(脱力状態で運動麻痺)時には積極的に使用します。こうすることによって運動機能が改善されやすくなります。

 

外来では回復期以降の患者さんが多いため、おもに「陽明経排刺法」を観る機会が増えます。この方法は、「治痿独取陽明(痿症を治すには、陽明経を使用する)」から来ています。手陽明大腸経(肩から手)や足陽明胃経(腿から足)に鍼を並べるように刺していきます。そのほかに「人中(鼻の下)」を「印堂(額、鼻柱の付け根)」「上星(髪の毛の生え際)」に変更した「小醒脳開竅法(俗に言う処方II)」を使用するなど違いがあります。これは、「人中」は意識障害に対して使用するため、意識障害がなく、片麻痺などの運動障害には「小醒脳開竅法(俗に言う処方II)」を使用するわけです。

 

前述した書籍には、「醒脳開竅法」と「その配穴(諸症状に対して使用するツボの処方)」が載っています。「陽明経排刺法」や「大醒脳開竅法・小醒脳開竅法(2パターンに分かれている)」の記載はありません。しかし、研修前に書籍の内容を事前知識として持っていくと、知識と見学内容がリンクしやすくおすすめです。

 

学生の方は、あまり臨床経験はないと思います。とくに1年生や2年生などの学年数の低い方は、事前知識を蓄えて、臨床見学でリンクさせるという方法は難しいかもしれません。そういう場合は、「鍼灸ってどのようなことが出来るか?」「中国ではどういったところで鍼灸をしているのか?」などを実際に体験することが重要だと思います。例えば実際に治療を見学して「手が弛緩して挙がらない」→「神経幹刺激」→「手が挙がる」→「すごい!」でも良いと思います。実際、僕が始めて天津で臨床見学したとき(学部生時代)は、先生方の刺鍼の速度が速すぎて、細かいことは置いてきぼり状態でした。ただ、例であげたような驚きはたくさんありました。

 

実際のところ、「醒脳開竅法」を数日間で完璧にマスターすることはできないと思います。学習の段階にあわせた目標を設定して、一つでも新しい体験をするということが重要ではないでしょうか?

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