必要な鍼の太さは?

先日、オンラインセミナーにて講師を務めさせて頂きました。頂いた質問の中に鍼の太さについてありましたので、本稿で少し話していきます。


鍼の刺激量に関して、鍼の太さと密接な関係があることは一般の方にもわかると思います。しかし、「なぜわざわざ太い鍼を使用する必要があるのか?」ということについては関心を持たれない印象です。というのも、「太い=痛い、怖い」という方程式が成り立つせいか、「なんとなく細い方がよい。なるべく細くしたい(または細くあってほしい)。」と考えてしまうせいかもしれません。


日本では0.16mmのいわゆる一番鍼というものが好まれているきらいがあります。メーカーによると、筋肉内への刺鍼は折鍼(曲がる)や抜鍼困難(抜けなくなる)防止の観点から0.20mm(3番鍼)以上を推奨とし、通電にも金属疲労による事故防止の観点から同様の扱いとしています。医療事故を防ぐ上で、使用目的に合わせて一定の鍼の太さが必要であることがわかります。


次に、治療効果の面で言えば、操作規定要求がある場合はなるべく規定通りの太さを使用することが好ましいと考えられます。例えば、以下のような事例の場合は、特段の事情がない限りは0.24mm(5番鍼)の使用が望まれます。もちろん、深さや手技などを含めて規定どおりに運用することが望まれます。たしかに、人によっては刺激が強すぎると言われてしまうこともありますが、最初から細い鍼だけで何とかしようとは考えずに、まずは刺激に慣れていってもらうことが大切です。もちろん、患者さんご自身にもこういった面にご理解頂く必要があります。


例(疾患Xに対する鍼の操作):

0.24mmの鍼(5番鍼)を使用し、深さ2cmまで刺鍼、鍼感を得た後に手技を1分間行い、置鍼30分後に抜針。


最後に、鍼の操作の面ですが、鍼が細すぎる場合は鍼先が安定せず、手技操作が行いづらいという問題があります。施術者の思ったところに鍼先が到達しないということや手技が円滑に行えない場合は、結果として患者さんに不利益が生じてしまいます。間違った方向に鍼先が向いてしまい内蔵を損傷してしまった、、、手技の最中に鍼が曲がったり手技に時間がかかってしまった、、、手技自体が適切に行えず必要な刺激が与えられていなかった、、、といった問題が生じる恐れがあるわけです。


施術者としてはあまり痛い顔をされたくない、患者さんは痛い思いをしたくないと考えるのは自然なことです。しかし、「優しい鍼を施すこと(施されること)」にとらわれて、本来の鍼をする目的(症状改善など)自体を見失ってしまうことは本末転倒と言えます。状況に応じて細い鍼を使用すること自体は悪いこととは思いませんが、前述のとおり、鍼の太さを決めることは非常に大切なことです。もちろん、必要以上に太い鍼は必要はありません。本稿が参考になれば幸いです。

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