手指の末梢循環障害への鍼
膠原病などによる手指の末梢循環障害には鍼を応用することがあります。鍼灸では、手三里(前腕の肘関節付近)や八邪穴(手指と手指の間)のツボを用い、留鍼(鍼を一定時間置いた後に抜く)や鍼通電を行う方法が一般的です。
・手三里の位置
手三里への鍼刺激が手指血流へ及ぼす影響
小野ら(1990)によるレッザードップラー血流計を用いた健常者と膠原病患者(進行性全身性強皮症および全身性エリデマトーデス、全例で手指)に対する研究によると、膠原病患者への施術前後で末梢循環障害が改善されたことがわかりました。そして、鍼施術(5分)から10分経過したあとも持続した血流改善がみとめられました。また、面白いことに健常者への鍼刺激ではあまり変化がなかったことが報告されています。
小野ら(1990)は別日に足三里(下腿外側の膝関節付近)への鍼刺激を行い、遠くにあるツボに対する刺激でも手三里と同じ結果が起こるのか?という疑問に答える研究を行いました。結果として、足三里(足のツボ)への刺激は手指の末梢循環を改善に影響を及ぼさないことがわかりました。
鍼刺激の生体へ及ぼすバランス調整作用が提唱されていますが、この研究でも、健常者よりも、障害を有する方に作用することがわかります。そして小野らは「障害が強いほど作用が出現しやすい」「局所的な作用」をがあるのではないか?と結論付けています。
さいごに
鍼療法は、大きな副作用も無く、比較的安全に応用することが可能です。血流が良好な人に鍼をして、さらに血流量が増えて大変なことになる、、、というようなことはまずないと言えます。また、薬との飲みあわせや肝臓や腎臓への負担もありません。興味のある方はぜひお試し下さい。
参考文献:
[1]小野孝彦,吉田剛典,曽炳文など. 膠原病の末梢循環障害に対する針刺激の効果. 全日本鍼灸学会雑誌 40(3), p254-258, 1990
[2]酒井友美. 血管病変に対する鍼灸治療の臨床的効果. 全日本鍼灸学会雑誌 53(1), 43-48, 2003