施術者の感じている鍼先の感覚

鍼先で気を得る

最近、鍼をしている時の施術者が感じている感覚についてご質問を頂くことがあったので、記事にしていきたいと思います。


得気(とくき、気がみちている状態)という概念は、古来より重要とされています。するすると入るだけではなく、渋るような重いような感じ(得気)が起きることがよいとされています。この時の鍼先の感覚は、よく「魚が釣り針をついばんているような感じ」と形容されています。また、得気が得られない場合は、手技を行って気がみちるのを待ちます。これを催気法(さいきほう)や行気法(こうきほう)と言います。


全体の流れ:

  1. 刺入:皮下に鍼を入れていく

  2. 行気:気を促す

  3. 得気:気が十分にみちる

  4. 手技:状態にあわせた方法

  5. 留鍼:鍼を一定時間刺さったままにする

  6. 抜鍼:鍼を抜き去る


昨今では、筋肉・筋膜由来の痛みに対してトリガーポイント(TP)と呼ばれる特異点の存在が提唱されています。最近ではエコーガイド下で筋膜の癒着や肥厚が確認されており、筋膜ではなく「ファシア」とも呼ばれていますが、まだ詳しいことはわかっていません。ただし、注射や鍼をこのTPに刺入することによって筋肉・筋膜由来の痛みが軽減または消失することがわかっています。


TP刺激(圧刺激)をすると、局所単収縮反応(きょくしょたんしゅうしゅくはんのう、local twitch response、LTR)が起き、血流改善がおきたり、筋張力が低下することもわかっています。この一連の現象も「得気(とくき)」の一つとして考えることが出来るはずです。


鍼はソナー

鍼は施術者にとって反応を起こす道具としてではなく、ソナーのような役割を果たしています。鍼先に伝わる感触から鍼先がどの組織を通過しているか、また組織の柔軟性や緊張を感じながらTPや硬結(コリ)を探していきます。


実は、鍼先が皮下に入ったあとの脂肪層ではあまり抵抗がなく、筋膜に当たると一定の跳ね返りを感じます。そのあと筋膜を通過すると筋組織に入っていき、また筋膜を貫通すると浅層の筋肉を一つ乗り越えたという手ごたえとなるわけです。また、骨に当たればコツコツとした感触があり、動脈の近傍では拍動を感じます。神経の近傍に鍼先がくると、患者さんの体動がおき、患者さんは触電感を訴えます。目的や目標にあわせて、感覚をたよりに鍼先を誘導しています。


さいごに

適当に刺しているようにみえても指先(鍼から伝わる感触)や目(患者さんの体動やLTRの確認)、耳(患者さんの訴え)から伝わる情報を目安に鍼の操作を行っています。もちろん、解剖学に基づいた指標を目安に安全深度や部位を決定しています。

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