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  • 執筆者の写真三焦はり院

末梢性顔面神経麻痺では顔が少しでも動き始めれば安心なのか?

更新日:3月6日

末梢性顔面神経麻痺は、表情筋の麻痺を主訴とし、ベル麻痺であればほとんどが治癒すると言われています。ただし、一定数は後遺症が残ると言われているため注意が必要ですが、少し動きが出てくると「自然治癒にまかせる(ケアを一切しなくなる)」と自己判断される方もいらっしゃいます。著者としては「自然治癒にまかせる」ことは、あまりおすすめしていません。


実は、ENoG検査(神経電気生理検査、非麻痺側と比較し予後判定などに用いる)で中等症以上と判定されたとしても、一般的には時間の経過とともに顔の動きは徐々に出てきます。ただし、「動くようになってきた=治癒する」とは限りません。


一般的に、損傷を受けた神経は、再生しながら神経の枝を伸ばしていきます。この枝が表情筋に到達し信号が届くようになると、顔の動きが出てきます。延長速度は一日1ミリ程度と言われていますが、回復の過程において「(筋収縮含めて)顔が少しづつ動くようになる」ことは珍しいことではありません。


しかし、動きが出たからと言って「このまま自然経過にまかせても治るだろう」と急激な治療方針のシフトをしていくと、ケア面において質的・量的な差が生じてしまい、「(結果的に)思ったよりも回復しなかった」ということになりかねません。


また、中等症以上では「運動麻痺(うごかない)」だけではなく、「病的共同運動(痙攣、口を開けると目が閉じる、眼を閉じると口が動くなど)」や「筋拘縮・筋萎縮(ひきつり、固まってしまい動かなくなる)」などの後遺症発症のリスクが存在します。後遺症発症の予兆を見逃したり、適切な予防・ケア(ミラーバイオフィードバック法、フェイシャルマッサージなど)を実施していない場合は、後遺症が出現・増悪・残存する可能性が高まります。


病的共同運動は3カ月頃から出現し、リスクが高い方は「最低一年程度は予防に努める方が良い」とされています。麻痺や後遺症が残存した場合は、多重的な治療が必要となることがあり、注意が必要です。また、高度に病的共同運動が完成してしまった場合は、リハビリであるミラーバイオフィードバック法の単独実施が困難となります(ボトックス注射等の方法で痙攣を取らないといけない)。


後遺症期になってから「やっぱりもう一度治療介入をしたい」といった場合、当初よりも多くの忍耐を強いられます。そのため、中等症以上の場合は、鍼治療を含め、早期から出来る限りのケアを量的・質的に継続する方がよいと考えます。


よく「家に帰るまでが遠足」と言いますが、顔が少し動いたからと言って「治りそうだから安心だ」と考えるのは時期早々に感じます。もちろん、継続加療したからと言って、必ず治癒する保証はありませんが、最大まで治療効果を高めることが大切です。


そのほか、継続加療の理由の一つに、セルフケアの確認があります。ミラーバイオフィードバック法を「単に顔を動かせばよい」であったり、セルフフェイシャルマッサージを「何回かやっておけばよい」というように思う方もいらっしゃいますが、完璧にこなせる方は少なく、自分一人で実施する場合は何かと自己流になりがちです。


鏡もみずにミラーバイオフィードバック法を実施したり(表情が非対称になるため、偏位していく)、表情トレーニングのように表情を強くつくったり(病的共同運動の誘発および増悪)、マッサージではなくスキンストレッチのみ(筋肉に刺激がいかず固くなる)をしたりすると症状はより増悪します。


顔の麻痺や後遺症は、審美性を大きく損ないます。予後を含めた治療の戦略眼が大切です。当院では、鍼治療とミラーバイオフィードバック法を含めたケアを提供し、回復期から後遺症まで幅広く対応しています。もちろん、細かい確認を行いながら後遺症予防・改善に努めています。


◆後遺症の予兆の例:

  • 口の動きに合わせて目元が痙攣する

  • 目の動きに合わせて口元が痙攣する

  • 単一の運動を行う際に、広範囲の筋肉が動く(口を動かすと首がつっぱるなど)

  • 鼻唇溝(鼻の下ー唇の線)が垂直ではなく曲がっている

  • 麻痺側のほうれい線が濃くなる

  • 口角が不自然に上がっている

  • 眼瞼裂(瞼と瞼の隙間)が狭まる

  • 頬の丸みがなくなる等

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