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  • 執筆者の写真三焦はり院

末梢性顔面神経麻痺とENog検査と柳原法の必要性

末梢性顔面神経麻痺ではENog検査(誘発筋電図検査、客観評価)と柳原法(表情をつくってもらいながら程度を観察して調べる方法、主観評価)で主に評価を行います。顔面神経麻痺発症から徐々に機能が失われていき、一週間過ぎた辺りがピークとなります。ピークに合わせてENog検査を行い、生きている神経がどの程度か?を評価します。10日~14日程度に行ったENog検査の数値は信頼性が高いと言われています。


末梢性顔面神経麻痺は、一般的に炎症によって生じた神経浮腫によって、頭蓋骨内にて血流障害が生じ、その機能が失われるためとされています。ただし、浮腫が生じた瞬間に、神経がいきなり死ぬわけではありません。これは例えるならば、手首を強く握られているような状態です。手首を強く握っても、瞬時に手首から指先にかけての運動機能が失われるわけではありません。手首を握られた瞬間には圧迫感のみですが、徐々に指が動かしづらくなったりと、経時的に運動機能が失われていくはずです。同様に、顔面神経自体も発症初期はさほどダメージを受けていないことが多く、発症から数日とピークに至らない時に行ったENog検査の数値は比較的高く出る傾向にあるため、必ずピークに合わせてENog検査を行う必要があります。また、ENog検査の数値も回復に合わせて上昇するため、注意が必要です。


一般的には、ENoG検査の数値が40%を超える場合は、病的共同運動による後遺症がほとんど生じず、1~2か月程度で回復すると言われています。40%以下の場合は、後遺症が生じるリスクが高くなり、20%を下回る場合は、病的共同運動が必発と言われています。理由としては、40%を超える場合は、伝導ブロック(信号が伝わりづらい状態)が生じている状態で、神経自体の損傷はないと考えられています。また、40%を下回る場合は、神経自体の損傷が生じており、回復に際して神経の枝を新しく伸ばしていくためだと言われています。神経の枝がのびる方向や量によって混線が生じるため、神経自体を過度に興奮させることはしないようにすることが大切です。


何らかの理由でENog検査を実施していない場合は、病的共同運動が生じる可能性を考慮しながら慎重に治療を継続する必要があります。とくに、柳原法のスコアが著しく悪い場合、2か月を超えても回復の兆候が見られない場合は注意が必要です。柳原法の欠点としては、検査をする人(検者)によってスコアにばらつきがみられるため、同一の検者が経時的な比較に用いる場合には適していますが、検者が変わるような場合には比較が出来ません。病院でとったスコアと当院でのスコアでは数点違うということもあるわけです。もちろん検者によるスコアが違うからと言って、短絡的に悪化した・改善したと捉えることは避けた方が無難です。


柳原法からみる症状の程度:

①軽症:20点以上(不全麻痺)

②中等症:10点~18点(不全麻痺)

③重症:8点以下(完全麻痺)

④治癒:36点以上で中程度以上の病的共同運動がみられないもの

※検者によるばらつきも考慮しなければいけない。


当院では、初診時にENog検査の結果をお持ちいただくようにお願いしています。併せて柳原法で状態の把握をしながら、どのあたりがどの程度動くかについて一緒にみていきます。スコアの算出には「0-2-4点方式(動かないー筋収縮以上がみられるーほぼ変わらない程度)」を用いますが、筋収縮のみ(ピクリとする程度)と自動運動可(左右差があるが運動がある程度出来る)では同じ2点でも臨床的な意義はだいぶ違うと考えられます。もちろん、検者によっては「筋収縮のみでは0」とされることもあります。


末梢性顔面神経麻痺は審美性を損なうだけではなく、中等症以上では焦りを感じやすく、心理的な負担も多い印象です。「あなたのスコアは〇〇です。」と言うことは簡単ですが、口と眼ではどの程度動きが違っているのか、この動作はどの程度出来ているのか、全く動かないのか、じつは筋収縮はあるのかといった具合にみることが大切です。また、状況を把握することで、モチベーションへとつながるはずです。このようにスコアだけではないところも説明をしながら、施術を心掛けています。


末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺・ラムゼイハント症候群・ギランバレー症候群など)でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

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