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末梢性顔面神経麻痺の重症度を経過時間から推測する

末梢性顔面神経麻痺の重症度と予後予測について前回の記事でお伝えしました。「適切なタイミングでENoG検査をしないと正確な神経損傷の程度はわからない」という内容も含めた記事でした。


もし発症から数か月経過した時点で経過が良くないと言った場合、状態をどのように捉える必要があるでしょうか?ENoG検査もしていない、柳原法もよくわからないといった場合、まずは時間経過から状態を推測してみて下さい。


下記の「ENoG検査と予後予測」から逆算して推測すると、発症から1か月の段階で治癒が認められない場合は、もしかしたらENoG値は40%未満かもしれません。2か月の段階で治癒が認められない場合は、もしかしたらENoG値は20%未満かもしれません。4か月の段階で治癒が認められない場合は、ENoG値は10%未満かもしれません。もちろん、40%未満(1ヶ月を超える場合)には後遺症も生じる可能性も高まります。口を動かすと目を閉じてしまう、顔が引きつる(痙縮・拘縮)といった症状があるかもしれません。


ENoG検査と予後予測:

① ENoG 値が40%以上あれば,麻痺は後遺症なく1カ月以内に治癒する

② 20%以上40%未満であれば,2カ月以内に治癒するが,わずかに後遺症が生ずる可能性がある

③ 10%以上20%未満であれば,4カ月以 内に治癒するが,後遺症の可能性が高まる

④ 10%未満で あれば,半数は治癒せず,治癒しても6カ月以上要し, 後遺症が高率に生ずる

⑤ 0%であれば治癒は望めない


参考文献:

[1]小池吉郎, 戸島 均 : 顔面神経麻痺の検査. JOHNS 1991 ; 7 : 1547―1558.

[2]稲村博雄 : 病的共同運動の電気生理学的検査. Facial N Res Jpn 1998 ; 18 : 11―13.

[3]萩森伸一 : 顔面神経麻痺に対する電気生理学的検査. 日本耳鼻咽喉科学会会報 2017 ; 120(10) : 1266-1267,


一般的に、重症度と回復までに掛かる時間は比例します。もちろん、マッサージやストレッチなどセルフケアを行っていない場合、間違った方法で顔をの運動をしてしまっている場合は、後遺症が強く出ることがあります。その他、年齢や体質によっても経過は左右されます。


鍼は副作用がほとんどないため、どの時期からでも始めることが出来ます。もちろん、投薬治療終了後から鍼治療併用をおすすめしていますが、数か月経っても自然治癒が認められない、変化が緩やか(または変化がない)な場合は、鍼治療併用を強くおすすめしています。


時々「自然治癒でも治らないのに鍼をしても意味ないだろう」「まずは様子を見て、経過が良くない場合には仕方なく鍼でもやります」という声もありますが、鍼の刺激によって神経系の賦活、拘縮・痙縮の緩和が起き動かしやすくなることが多い印象です。また、併せてマッサージのセルフケアや動かし方も指導しながら経過を見ていくことは自然治癒を待つよりもずっと経過が良い印象です。


顔面神経麻痺は機能面のみならず審美性にも影響を与えます。また、顔面神経麻痺だけではなく二次的な後遺症にも注意が必要です。自然治癒を待つ以外に方法がない場合は、ぜひ鍼治療も併せて試してみて下さい。なお当院では、後遺症誘発因子となる可能性があるため、原則として通電療法は行いません。

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