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東洋医学と現代医学の五臓

東洋医学に五臓という概念があります。肝・心・脾・肺・腎で五臓となりますが、実は、現代医学の肝臓・心臓・脾臓・肺臓・腎臓と似て非なるものです。


例えば、肝は現代医学の消化器というものではなく、どちらかと言えば気の流れに関係するため、肝が不調になれば怒りやすくなったり自律神経系が乱れたりといったイメージです。肺は呼吸に関係がありますが、気を取り入れたり悪い気を外に出すだけではなく、身体のバリア作用や全身を管理するイメージです。脾は現代医学の消化や免疫とは関係がなく、どちらかと言えば現代医学の胃腸のように消化全般を司るイメージです。腎は現代医学の泌尿器というだけではなく、先天の精(持って生まれた力)と関係するため、老化との関係が強いイメージです。


一鍼灸師として、東洋医学の五臓の話をする際には、なるべく「~臓」という言葉を使わないように、または、”東洋医学の~”と前置きをするように注意をしています。「(東洋医学の)肝臓が悪いですね!」と言ったしまった場合、多くの方が「(現代医学の)肝臓が悪いのかな、、、」と思ってしまうはずです。肝と言えば、抑肝散(よくかんさん)という漢方(ツムラ)が有名ですが、以下のとおり肝機能改善に対して作用するものではなく、神経症状(肝気の高ぶり)に対しての作用を目的としたものであることがわかります。また、神経系に作用するため、昨今では認知症のBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia, 行動・心理症状)に対しても効果があると言われています。


  • 抑肝散(ヨクカンサン): 漢方では「肝(かん)」が高ぶると、怒りやイライラが現れると考えます。「抑肝散」はこの「肝」の高ぶりを抑えることから名づけられた漢方薬です。もともと子どもの夜泣き、疳(かん)の虫に使われていた薬で、現在は大人の神経症状にも使われています。体力は中程度で、怒りっぽい、興奮しやすい、イライラするなどの症状のある人に用いられます。具体的には、神経症、不眠症、歯ぎしり、更年期障害、血の道症(女性ホルモンの変動に伴って現れる体と心の症状)、子どもの夜泣き、かんしゃく(神経過敏)などが挙げられます。抑肝散(ヨクカンサン): ツムラの漢方処方解説 | 漢方について | ツムラ (tsumura.co.jp)


このように、現代医学と東洋医学はまったく別物であることがわかります。自分自身に都合のよいように東洋医学を用いて誤用すること(確証バイアス:自身の信じたい情報だけを信じる)に注意しなければなりません。現代医学を通して東洋医学を理解する必要はなく、東洋医学を現代医学に当てはめる必要はないと言えます。

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