治療回数の考え方:通院頻度の目安と根拠。

以前、治療回数(通院回数)について書きましたが、あまり具体的な話が書いていなかったため、こちらでより詳しく書いていこうと思います。

 

当院では、「痛み」の緩和(コントロール)のほかに、認知症やパーキンソン病、脳血管障害後遺症(片麻痺)や顔面神経麻痺などの神経内科領域の鍼灸治療を積極的に取り入れています。

 

前者であれば、「痛み」という概念が感覚的にわかりやすいため、「痛みが取れている期間」=「次回治療までの期間」というように置き換えることができます。例えば、鍼治療後、3日間で痛みが戻ってくる場合は、大体週2回が目安になるのではないでしょうか?患者さんから、痛みが戻る前にケアをしたいという要望がある場合、回数を増やす場合もあります。「痛みの強い時は多め」に、「痛みが少ないまたは、コントロールできている場合は少なめ」の通院回数となります。

 

後者の場合、当院では、天津中医薬大学第一付属病院の韓景献教授の「三焦鍼法(さんしょうしんぽう)」や石学勉院士の「醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)」を応用しています。研究論文が出ている場合は、主に研究論文に準拠した回数を行います。例えば「アルツハイマー病に対する鍼治療では、週3回の治療介入において、アリセプト(ドネペジル)より効果があった」。また、「パーキンソン病に対する鍼治療では週2回の治療介入において、改善がみられた」といった論文があります。そのため「認知症治療に対する鍼治療は週3回」「パーキンソン病に対する鍼治療は週2回」が目安といえます。

 

脳血管障害の鍼治療法は天津中医薬大学第一付属病院が世界的に有名ですが、病棟では毎日2回(急性期から)、外来でも週4回以上(ほぼ毎日)の鍼治療介入が行われています。脳血管障害の特徴としては、後遺症期に移行する発症後半年以内(急性期~回復期)までの集中的な治療が必要です。また、後遺症期以降も、「痛みの緩和」や「機能の維持」などケアが必要となります。鍼治療も現代医療と同じく、発症後半年間(回復期まで)の治療が効果的です。

 

なぜ、鍼治療にも回数という概念があるのでしょうか?それは「薬」と同じで標準化された刺激量があるからです。現代医療の「効く」というのは、ある薬A(ある治療法)が「絶対に」、「誰にでも」効くこという意味ではありません。薬Aを一定量投与すると、「一定以上の対象(全員ではない)」に「一定以上の効果(完全治癒だけではない)」をあげることが可能ということが「効く」ということになります。そしてそれが治療根拠(根幹)になるのです。※本稿では統計学的な細かい説明は省きます。

 

日本において、鍼治療は原則自費となっています。保険治療と違い、どうしても割高感は否めません。そのため、鍼治療自体を躊躇される方や、通院回数を必要回数未満に抑える方がいます。

 

もし処方された薬の指示を守らず、必要量以下しか飲まなかった場合はどうでしょうか?「治療根拠(研究結果)どおりの効果があるかどうかはわからない」といえるでしょう。鍼灸治療にも同じことが言えます。何らかの理由で、実際の治療回数が目標治療回数を下回った場合、思ったような効果が出ない可能性は十二分に考えられます。これは一概に鍼が効かなかったわけではありません。そのため、初回の3ヶ月間は目標通院回数を守るべきだと思います。3ヶ月経過後、もし効果が著しい場合は、その時に回数を加減しても良いと思います。

国の定める保険治療は「必要最低限の治療」といった意味合いがあります。リハビリ時間を延長出来ませんし、指定された薬以外は使用できないわけです。歯科領域であれば、最低限使用に耐えうる義歯などが保険適応内です。見栄えもよく強度が高い義歯は保険では作れません。

 

「どうしても痛みがとれない」「他に治療方法がない」「研究論文で鍼が効くと聞いた」などの積極的な理由がある場合は、鍼治療をおすすめします。また、出来る限り根拠のある治療回数を継続して頂きたいと思います。

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