痙性麻痺によっておきる痙縮
当院でも提供している醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)は、石学敏教授(天津中医薬大学第一付属病院、中国)によって1972年に開発された「脳卒中に対する鍼灸治療」です。世界的にも有名で、同大学病院には世界各国からの研修団や留学生が集まってきます。私も4年間大学院所属し、第一付属病院の神経科と神経内科にて鍼の研修を行ないました。
今回は、握りこんでしまった手と鍼の話をします。
脳卒中発症後に片麻痺となる場合がありますが、一般的には、弛緩した状態(弛緩性麻痺)から始まり、徐々に力が入ってつっぱった状態(痙性麻痺)になっていきます。上半身では肘が曲がった状態で、手を握りこんでしまう姿勢に(ラグビーボールを抱えたような格好)、そして、下半身は突っ張った格好になり、足先が下をむいた姿勢(バレリーナの足のような格好)になります。
痙性麻痺によっておきた痙縮(固まった状態)が続くと、関節拘縮が起こり、症状は固定されてしまいます。痙縮を緩和することによって関節拘縮をおこさないことが重要です。また、機能回復を行なう上でも重要となってきます。
痙縮と関節拘縮
「痙縮」と「関節拘縮」はどちらも似ていますが、病態は異なります。痙縮は、脳から出力された信号によって筋肉に「ずっと力が入ってしまっている状態」です。一方、関節拘縮は使わなくなってしまった筋肉自体が「柔軟性を失ってしまった状態」です。
痙縮の場合は、出力自体が正常になれば動かすことができますが、拘縮を起こしてしまうと、脳からの出力自体が正常になっても動かすことができません。
鍼で手指の痙縮改善する方法
鍼では、合谷という拇指球筋上にあるツボを使用します。
手を開かせる方法:
①人差し指の方向に鍼を向けて、ついばむように刺激をしていきます。
②人差し指が3回動くか、5本の指が自然に伸びるまで刺激を行います。
③開かない場合は、違う方向に向けて鍼をしたり、手の甲に鍼をしていきます。
Xing Nao Kai Qiao Therapy - Affected hand
鍼の併用による相乗効果
鍼は飲み合わせなどの心配もなく、副作用も特にありません。様々な療法と組み合わせることが可能です。一般的な薬物療法+リハビリ(運動療法)に取り入れていくことによって相乗効果が生まれます。
例えば、握りこんだ手を鍼で伸ばした後に、手指の機能訓練を行なえば、決められたリハビリの時間を有意義に使うことが出来るはずです。
さいごに
手が握りこんでしまい、なかなかリハビリがはかどらない、、、伸ばす時に痛みが出やすい、、、こういった症状に悩んでいる方はぜひご相談下さい。関節拘縮になる前に症状緩和を図ることが大切です。