認知症にはアルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型、脳血管性など様々な疾患が含まれます。とくに代表的なアルツハイマー型認知症(AD)の割合は多く、高齢化に伴い患者数は増加傾向にあると言えます。
ADのイメージは、一般的には「突如始まって、徐々に記憶力がなくなっていく。」といったものかもしれません。しかし、実は発症する以前から我々の見えない所で徐々に徐々に進行していっているのです。報告によれば数十年という時間を掛けて発症していくといわれています。
ADでは主に異常な蛋白(Aβ, アミロイドベータ)が脳に蓄積し、神経細胞が傷害され、脳に萎縮をきたしていきます。とくに記憶を司る「海馬」が障害されやすいために、「物忘れ」などの症状が出やすいと言われています。このAβはAD発症以前から脳に少しづつたまっていき、最終的に発症となることが分かっています。そのため、誤解されているように、ある日突然に発症するわけではありません。
実は、ADの前段階(前兆)として「軽度認知障害(MCI)」という疾患があります。
ADとの大きな違い:
1) 認知機能障害1つ以上を認めるが、生活上は大きな支障はない
2) ADに移行する可能性がある(年10%程度)
3) ADとは違い、早期治療によって認知機能が正常範囲内に戻る可能性がある
上記のような違いがあるため、MCIの段階から治療を開始することが望ましいと言われています。
周りやご自身が「物忘れ」に気付いたときには、「歳相応だから仕方ない」「本人が大丈夫と言っているから、、、」といったことは考えずに、かかりつけ医への相談や、医療機関への受診をして下さい。
「ADを発症してから治療を始めればよいじゃないか」という声が一般の方から聞こえてくることもありますが、医療関係者の立場からすると肯定することは出来ません。
変化に気付いた時から、早期発見、早期治療を目指しましょう。決して対岸の火事ではありません。