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状況によっては鍼灸で健康保険を利用した方が費用対効果は高い。必ずしも実費負担が悪ではない。

鍼灸は高い?

巷では「鍼灸は高いから利用しづらい、、、」そういった声があふれています。施術所は病院と違い、適応症のみ(特定6傷病)となっていて、同一傷病では病院との保険利用が不可となってしまうなど、鍼灸利用を躊躇してしまう方もいるかと思います。


上手に利用すれば、鍼灸で健康保険を利用したほうが出費を抑えられる場合があります。保険適応症である「神経痛」「腰痛」を例にみていきましょう。1月分の治療費(施術代)として、鍼は週1回として計算していきます。


腰痛(または神経痛を伴う腰痛)の例:

パターン1)① + ② + ③*4(週1) = 総額

パターン2)② + ③*4(週1) = 総額

※①=ビタミンB12 ②=痛み止め ③鍼 とする


鍼灸の施術料の目安:

・全国自費平均:4,500円

・健康保険利用:1,570円(10割)


1割負担の場合

A)投薬(保険) + 自費鍼灸(全国平均):

①2000/10 + ②3000/10 + ③4500*4 = 18,500 +α(処方箋代、診察料)

②3000/10 + ③4500*4 = 18,300 +α(処方箋代、診察料)


B)投薬(保険) + 自費鍼灸(当院):

①2000/10 + ②3000/10 + ③3000*4 = 12,500 +α(処方箋代、診察料)

②3000/10 + ③3000*4 = 12,300 +α(処方箋代、診察料)


C)投薬(自費) + 自費鍼灸(当院):

①2000 + ②3000 + ③160*4 = 5,640 +α(衛生材料費)

②3000 + ③160*4 = 3,640 +α(衛生材料費)


3割負担の場合

A)投薬(保険) + 自費鍼灸(全国平均):

①2000*0.3 + ②3000*0.3 + ③4500*4 = 19,500 +α(処方箋代、診察料)

②3000*0.3 + ③4500*4 = 18,900 +α(処方箋代、診察料)


B)投薬(保険) + 自費鍼灸(当院):

①2000*0.3 + ②3000*0.3 + ③3000*4 = 13,500 +α(処方箋代、診察料)

②3000*0.3 + ③3000*4 = 12,900 +α(処方箋代、診察料)


C)投薬(自費) + 自費鍼灸(当院):

①2000 + ②3000 + ③470*4 = 6,880 +α(衛生材料費)

②3000 + ③470*4 = 4,880 +α(衛生材料費)


健康保険利用で週2回の鍼をしても、、、

A)1割:

①2000 + ②3000 + ③160*8 = 6,280 +α(衛生材料費)

②3000 + ③160*8 = 4,280 +α(衛生材料費)


B)3割:

①2000 + ②3000 + ③470*8 = 8,760 +α(衛生材料費)

②3000 + ③470*8 = 6,760 +α(衛生材料費)


結果はどうか?

実際に計算をしてみると、皆さんの考えている「健康保険利用で薬(痛み止め)をもらったほうが絶対安い!」とは言えないことがわかるはずです。上記のケースでは、「保険鍼灸+自費投薬」が一番安くなっています。


理由として、鍼灸の自費と保険では差額が大きく(1回で数千円分の差が出る)、痛み止めやビタミンB12程度であれば自費に切り替えた方が全体では出費が抑えられる形になります。また、週内の鍼施術回数を増やせば増やすだけ割安になっていきます。


「でも、、、鍼灸で健康保険を利用してしまうと病院では健康保険利用できないでしょ!血圧の薬だってもらってるし、、、。」と思う方もいるかもしれません。


勘違いされる方が多いですが、鍼灸の保険適応となっていない部位・傷病の場合は、二重利用とならないため、問題なく病院での健康保険利用が可能です。また、高血圧は鍼灸の保険適応症ではありません。


二重利用にならない例:

・腰痛への鍼灸(保険) + 病院から高血圧の薬を処方(保険)

→高血圧と腰痛は関係がないため、どちらも同時に保険が利用可能。


二重利用になる例:

・腰痛への鍼灸(保険) + 病院から腰痛への痛み止めを処方(保険)

→鍼灸の療養費は不支給となる(鍼灸は10割負担となる)。


なぜ差分がここまで違うのか?

病院での実費負担は基本的には保険点数に基づくため「10割負担=実費」と考えてよいかと思います。


しかし、鍼灸の費用は、基本的に自費施術額と保険での施術報酬は別物です。そのため、必ずしも保険利用分の10割額が自費施術額と同じではありません。


1回の自費施術を4,500円(全国平均)とすると、保険10割分(1,540円~)の3倍相当額となります。そのため、どうしても差分が大きくなってしまう傾向にあります。1割負担であれば30倍相当、3割負担であれば10倍相当ということになります。そのため、一部の自費主体の院では健康保険利用は取り扱っていない場合があります。


※当院では施術報酬分(10割)相当の「局所施術」を導入しています。


最後に

国民皆保険のため、あまり深く考えずに、健康保険を利用されている印象です。そのため、知らず知らずのうちに「鍼灸は高い」「病院での治療は安い」というイメージが固定化されているかもしれません。


本当のところ、同じ治療や施術を受けている(または受ける)のであれば、どのような組み合わせ方が(ご自身にとって)一番良いのか?ということを考えてみることも大切かもしれません。

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