鍼灸の位置づけ
鍼灸療法は、「医療類似行為」に位置付けられていますが、本来のカテゴリーは「(広義の意味合いでの)医療」に当てはまります。そのため文面だけの「医療ではない=医療類似行為」という意味ではなありません。しかし、なぜ「医療」ではなく「医療類似行為」であるか?というと、「医療(医科による医行為)」と明確に分けるために「医療類似行為」という言葉を使っているのが現状です。
当然、医行為には「はり・きゅう」行為も当然含まれています。そして、鍼灸免許(厳密には2免許に分かれている)は、医行為のうち「はり・きゅう」行為のみを限定的にやっていいですよ!という免許になります。もちろん医師は「はり・きゅう」行為をするにあたって鍼灸免許は必要ありません。また、鍼灸師は診断・投薬などの医行為はできません。
鍼灸院の位置づけ
鍼灸院などは「医療機関」とは呼ばず、「施術所」と位置付けられています。これも病院やクリニックと区別するためです。そして「保険医療機関」ではないため、「原則自費(一部のみ保険適応)」ということになっているのです。
そのため、鍼灸院や整骨院などの施術所にいけば、どんな人でもワンコインで保険マッサージが受けられるわけではありません。理由として、マッサージは、按摩指圧マッサージ師のみしか行えず、保険は「関節拘縮・筋麻痺」などに限られます。当然ですが、マッサージ師であっても「肩こり」や「腰痛」に保険適応でのマッサージは不可となっています。
鍼灸は「腰痛症」や「五十肩」「頚腕症候群」などが保険適応範囲になりますが、鍼を刺さずに揉むようなことはできません。もちろん柔整師は「ほねつぎ(整復)」などが業務内容となるため、「腰痛症」や「五十肩」「頚腕症候群」への保険マッサージは行えません。
病院との保険併療不可
保険医療は、決められた枠内での制限された医療(俗にいう最低限の医療)となります。そのため、同一傷病に対し、鍼灸院と病院の両方で保険を使った治療(または施術)を受けることは出来ません。腰痛に対し、牽引やリハビリを受けつつ、鍼で緩和ケアということは出来ません。
はり・きゅうの保険適応をする際に必要な同意書の裏面にも「 保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、保険者は保険医による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えないものとされています。」といった記載があります。
報酬が決められている保険と自費は内容が違う
鍼灸の保険は1540円~と決められています。鍼の一般的な相場が5000円程度ですので、1/3程度となっています。そのため、一般的な鍼灸院では健康保険取り扱いでも、「刺さない鍼のみ(ローラー鍼)」であったり、「自費料金から〇〇円割引(総額は自費と変わらない)」というような形で取り扱いをしています。保険だけの料金で自費と同じような施術を受けることは出来ません。
当院でも健康保険利用による鍼灸施術を提供していますが、時間(大幅に短い)や施術内容(局所のみ、本数も制限)は自費と異なります。※しっかり刺す鍼を行います。
鍼灸に向いていない人・向いている人
鍼灸院は前述のとおり「原則自費」「保険併療不可」となっています。そのため、、、「自費は嫌だ、なんとかして保険で自費と同じような施術を受けたい」であったり、「継続的な施術は望まない(1回で効果が出てほしい)」というような方に鍼灸は向いていません。
逆に、現代医療で効果があまりなかった、、、「自費でもよいから鍼灸を受けたい、継続的な通院でも構わない」という方に鍼灸は向いています。
もちろん病院での併療が不要な方で保険適応可能の場合は、健康保険利用の恩恵が受けられますが、一般的に「病院での併療が必要なほど症状が重たい人」や「病院での治療よりも鍼灸施術がよくきいた人以外」は「原則自費」となるケースが多いと言えます。
余談ですが、鍼灸の保険適応症である「リウマチ」に関しては、ほとんどの場合で薬物療法をしているため鍼灸の保険が掛けられません。
最後に
間違ったワンコイン治療のイメージで鍼灸院を訪れると、想像との差で驚かれる方も多くいらっしゃいます。中には、「〇〇院では何でも保険が利いたのに!」とおっしゃられる方や「鍼は高いのだから1回で治りますか?」と言った質問をされる方がいらっしゃいます。残念ですが、「何でも保険が利くこと」や「1回で治る保証」はどこにもありません。
医療先行を経て、保険医療の限界を感じて鍼灸院に駆け込む方が大半だと思います。しかし、鍼灸の制度をご理解いただけない場合は、残念ですが、「(本末転倒ですが、、、)今まで通り保険医療機関(病院・クリニック)での治療」を継続して頂く以外に方法はありません。
強い意志を持って「自費でもよいから何とか症状を改善したい!」といった方にとって、鍼灸療法は良い選択肢の一つとなる可能性が大いにあると言えます。
当院では健康保険利用可能であれば、単独もしくは混合による施術プランを提案しています。健康保険利用希望の場合は、事前にご相談下さい。※要事前予約