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  • 執筆者の写真三焦はり院

痙性麻痺と陰陽のバランス

脳卒中発症後の回復ステージは弛緩性麻痺から痙性麻痺へとシフトしていきます。発症3週間後には80%の患者が痙性麻痺にシフトしていくと言われています。(徐彦龙, 2011)


痙性麻痺で有名なマン・ウェルニッケ肢位というものがあります。上半身はラグビーボールを抱えたような恰好、下半身はバレリーナの足のような格好になります。上肢屈筋群と下肢伸筋群に痙性が生じた後、拮抗筋である上肢伸筋群と下肢屈筋群にも痙性が生じ、大きな動きから徐々に細かい動きへと分離し、正常に近づいていきます。


東洋医学では、この回復途中に発生する痙性麻痺を陰急陽緩期と呼びます。痙性が先に生じる筋群を陰(陰経)、遅れて痙性が生じる筋群を陽(陽経)とします。実すれば瀉し、虚すれば補うのとおり、陰経には瀉法を用い、陽経には補法を用いながらバランスを整えます。


極泉(きょくせん)という脇の下一寸のツボと上腕外側下方にある肘髎(ちゅうりょう)や、膝内側下方の陰陵泉と膝外側下方の陽陵泉を一対としてバランスを整える方法なども存在します。いかに陰経の痙性を抑えて、陽経の力を助けるかというのが鍼治療の要点となります(孟祥刚, 2015)。


また、回復ステージに合わせた鍼は、弛緩性麻痺に対しては強い刺激、陰急陽緩期には中程度の刺激、陰陽バランスが整ったあとは弱い刺激となります。極泉の刺激で言えば、弛緩性麻痺は上肢が3度跳ねあがるまで、陰急陽緩期では手の背屈運動が1度起きる程度、陰陽バランスが整ったあとは局部の鍼感(ひびき、得気)程度と言われています。(郭海燕, 2009)


鍼は神経系の機能回復・機能改善に対して有効と言われていますが、痙縮ではなく関節拘縮(いわゆる固まった状態)が生じてしまった場合や筋萎縮(筋肉が衰えて痩せてしまった状態)が生じてしまった場合は、鍼によって機能改善が行われても物理的に動かせない状態となってしまいます。


二次的な運動障害を起こさないように日頃からの十分なケアや関節可動域訓練などの運動療法を行うことが大切です。また、鍼の治療介入を検討する場合は、相乗効果も期待できるためなるべく早期から取り入れてみて下さい。


参考文献:

[1]徐彦龙, 杜元灏, 武连仲,等. 从理论角度看醒脑开窍法取穴及针刺依据[J]. 中国中医基础医学杂志, 2011.

[2]孟祥刚, 谷文龙, 马芬,等. 从腧穴的定位,进针,行针谈"醒脑开窍"针刺法[J]. 中国针灸, 2015, 35(003):249-251.

[3]郭海燕, 韩艾. 极泉治疗中风肢体瘫痪浅析[J]. 针灸临床杂志, 2009, 25(3):1.

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