鍼のメカニズムは、痛みの経路と関係がある
結論から申し上げますと、鍼灸鍼の太さは髪の毛程度しかありませんが、痛くないわけではありません。
私が施術中も、「ウッ!アッ!」という声が患者さんから漏れることがあります。しかし、刺激量や操作を間違っているわけではありません。もちろん私自身が鍼を受けている時も同様で声が漏れる時があります。
鍼のメカニズムは「局所の反射や、中枢(脳)を介した反射」とされていますが、鍼刺激の入力には”痛みの経路”であるAδやC線維が関係しています。これが古来から鍼感や得気(とくき)と言われるものの正体です。そのため、痛みと関係のない鍼というものは矛盾があるわけです。
また、「痛くない鍼は出来るか?出来ないか?」と言われれば、誰でも”痛くない鍼”は出来ます。刺さなければ良いのです。ただし、その”痛くない”鍼のほうが効果的かどうかは懐疑的です。※もちろん科学的に皮膚刺激だけで効果がある場合もあります。例:小児はり
世界的に有名な「醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう」という脳卒中への鍼は”痛い鍼”です。刺激も強く、心地よい鍼ではありません。しかし、効果は高く、72年から現在に至るまで高い評価を受けています。
中枢神経(脳)の機能改善には、三叉神経(顔の感覚を司る神経)への刺激が効果的であることがわかっています。醒脳開竅法では人中穴(鼻の下の急所)を、涙が出るまで刺激をします。
決まった手技手法を行い、決まった刺激量を与えなければ、意味がありません。痛いから悪い、痛くないから良いというものではないのです。
患者さんは、症状改善や症状緩和、、、または病気の進行を遅らせる目的で鍼に辿り着いているはずです。鍼を慰安ではなく医療の一つとして考えるのであれば、ぜひ痛いか?痛くないか?だけで判断せず、効果的であるかどうかに着目してみて下さい。
効果があると言う意味とは?
また、効果があるかどうか?という指標は、
痛みがゼロになること
症状がまったくなくなる
ということではありません。
「治療しなかった場合と比べて”確率的”に同じではなかった」=「効果あり」と考えます。そのため、テレビ広告でみかける個人の感想などには科学的根拠はありません。
グラフなどでの視覚的な見え方(大きな差があるように見える)や、数値のマジック(1ℓを1000ccと表記)を悪用した広告にも気を付ける必要があります。
症状が劇的に改善しても、自然治癒であれば、効果ありとはみなされません。また、慢性痛では痛みのスケールが「8/10 → 7/10(10=死ぬほど痛い)」に変化するだけでも効果ありとなる場合があります。
さいごに
痛いからよくない、、、痛くないからよい、、、という考えはそもそも存在しません。現在のあなたに鍼が必要かどうか?という考えが重要なポイントです。興味のある方はぜひ気軽にご相談下さい。