痛くない鍼も出来るが、痛い鍼をしなければいけない時もある。

鍼のひびきは軽視されているけど、本来は重要

日本では、俗に言う「無痛の鍼、細い鍼、浅い鍼」が良いものという風潮があります。個人的には、確かに「痛みもなく、あれっもう終わったの?」であったり、「細くて怖くない!」であったり、「皮膚にしか刺さってないから安心!」といった鍼はある意味理想ですが、すべてそれで症状が治まれば、、、ということが前提です。


古典にもあるように、一般的には「鍼感、得気(de qi)、響き(全部同じ意味)」というものが重要です。「重(おもだるいような)・麻(しびれるような)・酸(筋肉痛のような)・張(張ったような)」な感覚を自覚します。しびれや、筋肉痛の時点ですでに「無痛(何も感じない)」とは言い難いはずです。また、上記の代表的な得気以外に「痛(痛い)」も存在します。


術者の感覚としては「水面に垂らした釣り糸を魚についばまれるような、、、」であったり、「筋肉が動く反応がみえたり、、、」といったものがあります。


アメリカ発祥のドライニードリングも刺激感あり

昨今では、アメリカの理学療法士に鍼が限定的に解除されました。アメリカでは東洋医学に基づく鍼灸手法は「acuancture」で、理学療法士の行う鍼施術は現代解剖学に基づく「dryneedling」というように定義されています。日本の鍼灸師からすれば、どちらも鍼灸療法ですが、細かく分けられているようです。


「dryneedling」は、「筋・筋膜などの痛み」に対し応用されています。理論は非常に簡単で、硬結(コリ)に鍼をヒットさせ、このコリに関係した痛みを解除していきます。コリに鍼がヒットすると、局所単収縮反応「LTR, Local Swith Responses」といって、筋肉の収縮反応(ビクッと筋肉が跳ねる)が起きます。


LTRが起きると、受け手は「うぉ・・・」といったように思わず声が出てしまうことがあります。また、コリが強くLTRが強く出ると、「ううぅ痛い、、、」と反応する方もいます。鍼灸師としては、このLTRが起きると、心の中で「やったー!いい反応だ!」とガッツポーズを取るわけですが、受け手としては素直に「やったー!」とはいかないものです。


しかし、「良性反応=明確な症状改善の可能性」となるため、受け手が一時的に「痛み」を感じても、症状改善のためには避けては通れません。


世界的に有名な脳卒中に対する特殊鍼法の刺激は強め

脳卒中後遺症治療として世界的に有名な「醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)」という特殊鍼法があります。手技や刺激量の定量化がされており、EBM通りの治療成績を上げるには処方に則した方法を臨床応用することが必須です。


定量化された手技の中には、麻痺肢に対する神経幹刺激が含まれており、上肢であれば手が3回跳動するまで、下肢であれば、足が3回跳動までと決まっており、手技が適切であれば、麻痺肢は跳ね、強烈な触電感が走ります。


また、意識障害には、鼻の下の急所である「水溝(人中)」に鍼を刺し、つつく様に刺激をします。この三叉神経(感覚神経)を介した刺激は非常に強烈で、眼球の湿潤(要するに涙が出てくる)が起きます。この「涙がこぼれる」ことが刺激の目安となっています。


上記のとおり「無痛鍼」とは無縁といえますが、術者の判断で「わざと無痛にする」ことは正しくありません。


無痛にするのは簡単だけど、、、本当にそれでいいのか?

無痛にする方法は簡単です。鍼を刺さないか(!?)、刺さっても痛くない鍼(シール鍼など)を刺すことです。しかし、適切な刺激がなければ「何も起きていない。」状態になっている可能性があり、注意が必要です。※一般的に一定の刺激量がないと、効果が薄い


たしかに、受け手(患者さん)からすれば、無痛の鍼は「怖くないし、、、」「痛くも無い、、、」ため治療継続をしやすいかもしれないですが、本来の「症状改善」を目指さず「ただ治療継続させること」が、本当の意味で「受け手のためになっているか?」という点では疑問です。


患者さんは「この症状がつらい」「痛みでどうしようもない」といった悩みを抱えて来院されます。施術料もただではありません。リラクゼーションはリラクゼーションで受ければいいはずです。鍼灸を受けに来る方は、基本的に「癒し(ただの気持ちいい)」を求めているわけではないと思います。


また、術者も受け手も「本来の目的≠痛みがないこと」ということを忘れてはいけません。「本来の目的」は「症状改善」です。


最後に

施術者判断で、「治療継続目的のために、無痛の鍼(効果の薄い)を癒し目的(≠症状改善)」で行うことは患者さんのためになりません。時に施術者は、患者さんの症状改善のために「(心を鬼にして)痛い鍼をしなければいけない時もある。」のです。施術者はけっして痛い思いをさせたいわけではありません。


そして同様に、患者さんはご自身を悩ませている其の症状を鍼で改善させるために、「あれは痛いからいや、、、」「痛くない鍼で、、、」「本数は1本で、、、」というような状況を自ら作るべきではありません。適切な施術が行われなければ、気持ちの上では楽でも、症状が改善することはほとんどありません。


当院では、患者さんの症状改善を第一に考えて、適切な鍼処方を心がけています。また、刺激に慣れていない方には、説明を十分に行い、徐々に刺激量を上げていきます。ご安心下さい。


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