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百会穴など頭部への鍼は危ない?それとも安全?

頭のてっぺんのツボ

NHKで鍼灸に関する特集があったおかげか、「百会(ひゃくえ)」などの効果や効能に対する質問などをされる機会があります。


GV20.百会(ひゃくえ):

取穴部位:前髪際を入ること5寸、正中線上、脳戸穴の前4寸5分、神庭穴の後5寸、連耳線(左右の耳尖を結んだ線が正中線と交わるところ)

筋肉:帽状腱膜

知覚神経:大後頭神経、眼窩上神経、耳介側頭神経

血管:眼窩上動脈、浅側頭動脈、後頭動脈


百会は、上の説明だとわかりづらいですが、「頭のてっぺん」にあるツボです。穴性(効果)は多岐渡るのですが、「神志(情動)」に良い影響を与えたりと非常に汎用性のあるツボです。砂川ら(2019)の研究によると、ラットの百会穴に円皮鍼(シールタイプの鍼)を貼り付けると、ストレス反応が抑制されることが報告されています。この研究からも情動に良い影響を与えるツボであることがわかります。


また、ストレス反応抑制は、「(東洋医学的に)気がおちる」というような表現が出来ますが、ツボの性質は双方性のため、「(陰陽のように)上がりすぎれば落ち、下がりすぎれば上がる」といった効果を発揮すると言えます。そのため、脱肛(東洋医学的には虚脱状態)などにも百会が応用されるという記述が残っています。


頭に鍼をすることは安全かどうか?

実は、質問の後に「私の場合はどうですか?」と言った話が必ずと言って出ます。そのため、適用の場合は、「試してみますか?」と返すようにしています。しかし、多くの方が、「でも、、、やっぱり、、、頭って危なくないですか?」と心配そうな顔をされます。


解剖学に基づくと、頭皮の下には頭蓋骨があり、脳を外からのダメージから守っています。頭部には毛細血管が多く、皮下出血などには気を付ける必要がありますが、ぶ厚く固い頭蓋骨があるため、脳に直接はりが刺さることはありません。イメージと違い、安全な部位と言えます。


あまり鍼灸鍼に触れる機会はないと思いますが、注射針とは違い、柔らかく弾力性があり、そして細い(髪の毛ほど)形状をしています。そのため、鍼を皮下に刺入だけでも技術が必要となります。下手に力を入れると皮膚を貫通せずに鍼は折れ曲がってしまいます(折れて切断するわけではない)。皮膚よりも固い骨を貫通することは事実上不可能ということになります。


実は危ない部位は、、、

鍼をする際に、多くの鍼灸師は「気胸」を起こさないように注意を払います。そのため、首の付け根や、鎖骨まわり、僧帽筋(肩たたきのところ)の下、肩甲間部、肋間など胸部が一番危ない部位だと言えます。


そのため、当院では「ここをもっと深く刺してほしい」と言った指示や要望があった場合、十分な深度が確保できない場合(あまりに痩せている)には、「気胸」のリスクと施術方法の説明を再度行っています。


おわりに

イメージでは危ないように感じる「頭部への鍼」ですが、基本的には安全な部位と言えます。そのため、あまり怖がらずに鍼を試してみてはいかがでしょうか?


参考文献:

[1]砂川 正隆, 藤原 亜季, 池本 英志ら(2019). 鍼治療がストレス反応に及ぼす影響 —円皮鍼の基礎研究より—. 自律神経 56(3), 150-154

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