当院では、院内に経穴(ツボ)の載っている経絡図(十四経)を飾っています。経絡図をみながらここにツボがあるのかと確認されている患者さんも時々見受けます。先日、「経絡上のツボ以外に鍼はしないのか?」という素朴な疑問を頂く機会がありましたので記事に致しました。
「鍼=経絡、経絡=ツボ、ツボ=絶対的な治療ポイント」と感じる方もいるかもしれませんが、必ずしも経絡上に鍼をしているわけではありません。というのも、経絡だけ(またはツボだけ)に鍼をすると決めてしまうと施術の幅を狭めることに繋がります。また、経絡に依らない奇穴(きけつ)という特攻穴や反応点である阿是穴(あぜいけつ)という概念もあり、経絡図に載っている十四経(経絡図)だけにツボがあるわけではありません。そのほか、危険部位以外であれば自由に鍼をすることが出来るため、解剖生理学に基づいて全くツボと関係がない部位(筋肉や神経と関係のある部位など)に鍼をすることもあります。
主な経穴は361穴ありますが、実は経穴の位置は諸説あり、現在の国際基準は2006年につくば市で開催された経穴部位国際標準化公式会議において決定されたものです。9カ国 (日本、中国、韓国、モンゴル、シンガポール、ベトナム、オーストラリア、アメリカ合衆国、英国) と2組織 (WFAS=World Federation of Acupuncture Societies, AAOM=American Association of Oriental Medicine) から計20名の専門家参加による標準化になります。標準化以前と以降では若干ツボの位置が異なるということもあり、卒業年度によっては未だに古いツボの位置を使用している鍼灸師もいるはずですが、一概に間違いであるとは言えません。もちろん賛否はあると思いますが、個人的には多様性や大らかさが東洋医学の面白さでもあると感じています。
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参考文献:
[1]形井,秀一, 篠原,昭二, 坂口,俊二, et al. WHO経穴部位国際標準化の経緯と今後[J]. 全日本鍼灸学会雑誌, 2007, 57:576-586.