1次性頭痛の中で、「緊張型頭痛」の占める割合は7割程度と言われています。精神的なストレスや身体疲労などの因子が複雑に絡み合って、後頚部や頭部の締め付け感、肩こりなどを諸症状とする「緊張型頭痛」が起きます。
緊張型頭痛に対して鎮痛剤など療法を試すことが多いとおもいますが、薬物療法が効かなかった時、反復性または慢性の緊張型頭痛の選択肢として鍼療法も有用です。
菊地ら(2016)の報告によると、1ヶ月の薬物療法で効果の得られなかった反復発作性緊張型頭痛(frequent episodic tension-type head-ache, FTTH)と慢性緊張型頭痛(chronic TTH, CTTH)の患者に対し鍼療法を行なったところ、有効率はFTTH80.1%、CTTH59.9%となりました。
評価にはVisual Analog Scale(VAS)という自覚症状の評価に用いられる指標(100mmの線の上に印をつける方法。左が0、右端が10とする。)を用い、50%以上の改善で有効としています。
National Institute for Clinical Exellenceのガイドラインでは5-10回検討するようにとされていますが、菊地らの報告では、FTTHは平均2.8回14.9日、CTTHは平均8.9回35.9日の治療介入期間となっています。菊地らはFTTHでは3回2週、CTTHでは9回5週継続し効果判定すべきだと述べています。
以上のことから、薬物治療にて治療成績が思わしくない場合は、鍼療法は選択肢の一つとなり得ることがわかります。また、鍼療法を行う場合は、1回だけで効果を判定すべきでなく、最低1ヶ月程度は継続してみることが重要です。とくに慢性的な緊張型頭痛には根気が必要であると言えます。
鍼は即効性がある、鍼は穏やかにゆっくり効いてくるといった極端な議論がされがちです。しかし、実際は症状や体質、環境などによって個人差が出てきます。こういった事は無視されがちですが、菊地らの報告が裏付けるように、同じ緊張型頭痛でも性質・性格によって鍼の 効き方が違ってきてしまうのです。
緊張型頭痛にかぎらず鍼療法を開始した場合は、ある程度の期間は根気よくつづけるようにしましょう。
参考文献:
[1]菊地 友和 他(2016),薬剤で期待すべき効果の得られなかった緊張型頭痛に対する鍼治療の臨床的効果, 神経治療, 33(3): 480-483
Comments