肩関節に可動域制限があっても鍼が著効する場合
凍結肩
肩関節周囲の炎症でおこる五十肩があります。凍結肩(Frozen shoulder)と言われているもので、名前のとおり固まってしまい可動域制限がでてきます。炎症による軟部組織の癒着や動かさないことから生じる拘縮によって可動域制限がでると言われています。一度完成してしまった凍結肩は数か月から数年かかると言わています。また、炎症度合いや痛み以外にも年齢によって回復までに時間がかかることがわかっています。そのため、「ただの五十肩だ」「そのうち治る」と思わずに早期からケアを行っていく必要があります。
可動域制限があっても鍼が著効する例
痛みや可動域制限が強く、まったく腕が挙がらない方でも、鍼をした後に急激に回復することがあります。癒着や拘縮がある程度起きている場合、数時間~数日のうちに可動域が極端に改善するというのは考えられません。そのため、トリガーポイントという硬結(コリ)による可動域制限ではないか?と推測できます。
トリガーポイントとはどういうものでしょうか?正常な筋肉はゴムバンドのようにスムーズに伸び縮みし、しっかりとした関節運動を生みます。しかし、固い部分(トリガートイント)があると筋肉は伸縮力を失い、運動はスムーズさを失います。そのため、正常時と同じ長さまで動かそう(関節運動)とすると、筋肉自体にかかる負荷が極端に増えて痛みを引き起こしたり、正常な範囲まで動かなかったりするわけです。このトリガーポイントを解除することによって、再び筋肉は正常に伸び縮みするようになり、痛みがなく関節運動が行えるようになるのです。
二次的な拘縮を起こさないように
一旦、癒着や拘縮が高度に生じると、一回の鍼施術だけで著効することはありません。まずは、癒着や拘縮を起こさせないこと、そして二次的な拘縮を起こさないことが重要です。トリガーポイントが原因であっても、痛いから動かさないといった状態が続くと、徐々に筋力が低下し、関節自体が拘縮をおこし固まってしまいます。こうなってしまう前に、トリガーポイントを解除するようにしましょう。
さいごに
鍼は深部まで到達するため、鍼先を深部にあるトリガーポイントに当てることが可能です。また、副作用もほとんどなく、適宜本数を増やすことで広い範囲を刺激することが可能です。トリガーポイント注射の機序と鍼によるトリガーポイント刺激は非常によく似ています。患者さんの要望に合わせて、注射の代わりに鍼をすることも可能です。また、注射と併用することもよいでしょう。興味のある方はぜひお試しください。
補足)映像
1) エコーガイド下のトリガーポイント注射
https://www.youtube.com/watch?v=zXsfJY72Zl0
2) エコーガイド下のドライニードリング(鍼)
https://www.youtube.com/watch?v=o4hL-7x7XQY