胡散臭いイメージの東洋医学は、現代的研究手法でまじめに研究されている。
よく「東洋医学なんて胡散臭い」というイメージがあると思います。仙人のような人が、眉をしかめながら脈を診て、、、「あなたの○○の臓が悪い!」というようなイメージを持たれているかもしれません。
「○○の臓」はよく一人歩きしがちですが、「解剖学の臓器≠東洋医学の五臓六腑」となっていて、全くの別物です。「肝の臓」が悪いからといって「(現代医学としての)肝臓障害」ではありません。
前述したような誤解を受けやすい東洋医学ですが、研究手法は至ってシンプルで、統計学的手法(現代的研究手法)を用いている場合がほとんどです。そのため、東洋医学だから感覚に頼った方法で研究しているわけではありません。
統計学的手法とは、統計のような数字の大小をグラフで比べるものではありません。AとBの二つのデータが見かけではなく、確率として一致するかどうかを調べる手法です。5%(20回中1回)の一致する確率より低い場合は、「差がある」として違うものであるとします。もし、5%以上であれば、慣例的に「差がない」として効果は同程度として考えます。
世界で初めて鍼灸のRCT(ランダム化比較試験, ランダムに被験者をグループ分けする手法)を実施したのは日本の木下晴都と言われています。1960年代、世界に先駆けてのRCT実施であり、このRCTは現在でも研究手法として推奨されています。RCTによって、サンプル(被験者など)の差がなくなり、誤差が少なくなります。
現在では、RCTに盲検(被験者や実験実施者にどちらが本物(A)か偽者(B)かわからなくした方法)を加えた方法を取ります。鍼施術は、性質上「鍼を刺されていること」や「鍼を相手に刺していること」を隠すことが容易ではありませんでしたが、「分からないように細工してある鍼」が開発されてきており、更にレベルの高い研究が報告されています。
トップジャーナルになっている福島県立医科大学の鈴木雅雄准准教授によるCOPDの研究では、「分からないように細工してある鍼」と「客観的検査方法」を用いており、最先端の研究となっています。以下のサイトで動画を見ることが出来ます。
科学的に証明されたCOPDの鍼治療:
http://www.ampo.jp/movies/vol39/
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の労作時の息切れに鍼治療が有効:
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/news6/2012/120523_2.htm
胡散臭いイメージの東洋医学は、現代的研究手法でまじめに研究されていることがわかります。また、現代的研究手法に乗っ取った場合は、データの結果が全てですから、言い訳ができません。思っていたのと違うということも当然ありますし、その逆もあります。
鍼灸に関する国内の論文は多くありませんが、アメリカや欧州、中国や韓国などの東アジアでは盛んに研究が行われています。
一般的に、研究論文などは、自分自身で検索したりしない限り目にすることはありません。一般の方が「どこで鍼の研究なんかやっているの?そんな話聞いた事が無い、、、」という話はごもっともだと思います。
今回、30年ぶりに改訂されるICD11(国際疾病分類)に東洋医学の項目が編入されます。もちろん鍼灸も含まれます。現代的手法で盛んに研究されていることや、鍼灸の良さが周知されることを願っています。