脳卒中からみる現代医療的・中国医学的な考え方。
脳卒中(脳血管障害)は、現代医学的には「脳出血」「脳梗塞」「くも膜下出血」に分けられます。脳出血と脳梗塞では治療方法が違います。脳出血では、血圧を下げたり、出血を止めたり、血の塊を除去したりします。逆に脳梗塞では、詰まっているわけですから、詰まっているものが体に吸収されるような方法を取ります。血が固まらないようにしたり、さらさらにしたりします。脳卒中でも、原因によって方法が全く違いますし、「脳出血」と「脳梗塞」では逆のような方法を取るわけです。
私が在籍していた天津中医薬大学(中国・天津)の第一付属病院は、脳卒中に対する鍼灸治療方法「醒脳開竅法」が有名です。外来・病棟問わず、鍼灸科へ来院する患者さんのほとんどが「脳卒中」で来られています。
中国といえば、易学のような「中医学」的な治療方法が頭に浮かびますが、現在の主流としては「中西結合(東洋医学も西洋医学もあわせて)」が採用されていますので、中国医学一辺倒というわけではありません。漢方薬処方では脈を診たり、舌を診たりしますが、基本的には西洋医学的な検査や診断を下していきます。
今思えば当然といえば当然なのですが、最初に現場を見たときは、西洋医学的な話8割、東洋医学的な話2割といった形でしたので驚きました。脈をみて、舌をみれば、何の病気かわかる!といったような感じではありません。あくまでも脈なども情報の一つといった考え方です。
MRIやCT、血液検査などの所見を入手することは、診断を下す上で重要となります。手がかりが多ければ多いだけよいはずなのです。スタンスとしては、「現代医学が発展しているのにわざわざ体表観察だけに固執する必要もない」わけですし、逆を言えば、「昔ながらの方法を捨てる必要もない」わけです。
話を戻しますが、脳卒中(中風)を中国医学的に分けると、「中経絡」「中臓腑」というように分けることができます。なんのこっちゃという感じですので、簡単に説明をすると、「中経絡病=麻痺があるが、意識障害が無い」「中臓腑病=麻痺もあるし、意識不明」といった形で、重症度で言えば「中臓腑病」のほうが重い感じになります。
ここで気付かれた方もいるかとおもいますが、中国医学的脳卒中には、「梗塞」や「出血」の概念はないのです。現代医学的には反対の概念のはずですが、同じ扱いになっています。そうなってくると、重症度だけで分類しても、限界があるといえます。昔の時代に、「伝統的な分類方法+治療方法」で助かった人もいるはずですが、何でかわからないけど結果として亡くなってしまった方もいるはずです。より精度をあげるためには、時代にあったより良いものをどんどん取り入れていく必要性があります。
現代医学的な方法も、伝統的な方法もどちらもよいバランスで取り入れていくことが、一番よいのではないか?というように感じています。