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脳血管障害やパーキンソン病などの機能性嚥下障害に対する鍼の紹介。運動療法と併療してみてはいかがでしょうか?

更新日:2020年2月17日

機能性嚥下障害

嚥下障害は「飲み込みが出来ない。または、しづらい。」状態のことです。嚥下障害がおきると、食事をするだけで疲れてしまったり、食べる楽しみが苦痛に変わると何も食べたくなくなってしまったり、、、といったことが起こってしまいます。また、それに伴う脱水や栄養不足による体重減少や、誤嚥による肺炎などのリスクが高まります。


脳血管障害やパーキンソン病などを発症すると、機能性の嚥下障害が起こることがあります。機能性障害とは、器官の構造そのものには何も問題ないけれども、筋肉や神経がうまく働いていない状態をさします。そのため、この機能が少しでも上手く働くようにアプローチをかけていくことが重要となります。


鍼によるアプローチ

鍼では、直接のどの周りにある筋肉や神経付近を刺激し、賦活(目覚めさせる)させるようにアプローチを行います「廉泉(れんせん):のど」や「 翳風(えいふう):くび 」というツボが有名です。刺激は舌やのどの奥に伝わるように刺激をします。


当院では、口腔内への刺鍼は行っておりませんが、本場中国では、舌下静脈(舌裏の静脈)を点状出血させたり、舌の上を毛刺(つんつんとつつく)したり、長い鍼で咽頭壁を刺激したりします。


また、東北大学の関らの研究によると、「足三里(あしさんり):むこうずね」と「太渓(たいけい):うちくるぶし」のツボを15分間刺激すると、脳卒中によって阻害された嚥下反射が改善し、誤嚥が改善すると言われています。


おわりに

よく(言語聴覚師による)運動療法をしたらよいか、(鍼灸師による)鍼をしたらよいか、、、と悩まれる方がいらっしゃいますが、鍼灸師の立場から「相乗効果もあるため、もちろん併療する方がよいでしょう。」とお答えしています。


実は、運動療法と鍼は、アプローチの方向性が違います。併療したからといって無駄になることはありません。舌やのどのトレーニングと並行して、鍼による機能回復を加えることによって、相乗効果が期待できます。トレーニングを行うにしても、機能回復が促進されている状態の方が効果的です。また、鍼で機能回復を行った後に、しっかりトレーニングを行ったほうが、より効果的だと言えます。


さきほどの鍼のアプローチもそうですが、「解剖生理学的な刺激方法」と「東洋医学的なアプローチ」どちらにしようか?ということはせず、どちらも併せて行っています。決して、どちらかに絞らなければいけないということはありません。


機能性嚥下障害には、鍼がよく応用されています。興味のある方は、ぜひお試し下さい。


参考文献:

[1] 関隆志. 老年医学と緘灸[J]. 全日本鍼灸学会雑誌, 2010, 60(1):13-22.

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