自己流の痛くない鍼は効かない。刺激量や方法は体質や症状によって選択すべき。

痛い鍼や痛くない鍼って?

よく鍼の響き(得気、鍼感)を「痛い」と表現されることがあります。この響きには「張ったような(张)、しびれるような(麻)、筋肉痛のような(酸)、重いような(重)」といった感覚が含まれます。一般的に、皮膚を鍼がつらぬく「鋭い痛み」と分けて考えるべきだと言われていて、同じ「痛い」でも、響きは、(古典に基づくと)効果の目安として重要視されています。また、一般的には、「無感覚のもの(響かない)」よりも「感覚のあるもの(響く)」方が血流改善などの反応が現れやすいといわれています。


「あの先生は痛い鍼をする」であったり「あの先生は痛くない鍼をする」という話が出がちですが、実は患者さんの体質や症状によって「鍼の響き」に対する感じ方もまちまちですし、同じ先生でも「痛い鍼」や「痛くない鍼」を使い分けているはずです。私も、患者さんの体質や症状によって刺激量を変えています。


電気を流す場合は、折鍼(もろくなり折れる)を防ぐために0.20mmφ以上の太さは必要です。また、深部筋へのアプローチする場合も安全面から太めの鍼を使用します。太さが増せば確かに違和感が増える可能性はありますが、最低限の太さは必要です。痛みをなくそうとして、細い鍼に通電をした結果、鍼が折れて体内に残ってしまう、、、こういうことは絶対に起こしてはいけません。


また、刺激方法や刺激強度が決められている場合は、自己流にせず再現性を高めるために出来るだけ(自己流という意味ではなく、本来の)オリジナルに沿った方法を行います。再現性が損なわれると、本来の効果は期待できなくなってしまいます。


当然ですが、強い響きが必要な場合(脳卒中後遺症に対する手技など)は、効果の再現を考慮し、理解を頂きながら鍼をしていきます。なかには、鍼の刺激で涙が出るまで(痛みで眼球が潤うレベル)刺激を与える必要があります。また、軽い刺激で十分な場合は、この限りではありません。


自分の価値観(自己流)を押し付けないこと

前述したとおり、オリジナルに沿うことが重要です。しかし、時に自己流に走りたくなる気持ちが出てくることもあります。例えば、「自分自身が鍼を受けた時の響きが苦手だから、患者さんにも響きのない刺さない鍼で全部やりたい。」といった考えです。


こういった考えは一見すると「患者さんに寄り添った優しさ」に見えますが、再現性のない(根拠の無い、効果のあるかわからない)治療方法を患者さんに試みることは、本来の優しさではありません。


自己流で鍼をしても、もしかしたら、患者さんによっては効果があるかもしれません。しかし、それは結果論としてのよく分からない効果(結果として、なんだかわからないが効いた)であってプラセボ(この鍼灸師のファンだから効いたなど)かもしれません。また、「刺さない方法だけで全ての症例に対応できるか?どうか?」と考えた時、「刺激の強い方法だけで全てに対応できるか?どうか?」と同じくらい難しい問題です。


誇大広告には要注意

巷には、「他と違う無痛の鍼で、、、」「刺さない鍼だけで、、、」という宣伝文句があふれています。確かに、鍼に対するネガティブイメージは「痛い・怖い」で間違いないと思います。こういった甘言は潜在需要を呼び起こすには最適ですが、(当然無痛なわけはないので、、、思っていたのと違うと)がっかりさせてしまったり、(刺激量が足りなくて)鍼は効かないと思われてしまったり、(逆に)響きのある鍼は下手だと思われてしまうことがあります。


痛くないと言われて行って、1回でもチクリとしたら「嘘付き!下手!」と言いたくもなるでしょう。無痛でも効くと言われて行って、何の変化もなければ「鍼なんてこんなんもんか、、、。」と言いたくもなるでしょう。そんな誇大広告で教育されてしまった患者さんは、鍼を受けると「前と違うんだけど、、、。他の院では痛くなくて当たり前だった!」と言ってきます。


私は、「思ったよりも痛くないかもしれないですが、人によっては痛く感じることもあります。基本的に鍼は痛いものです。体に鍼が入るのだから当然です。」「響く感覚はあった方が良いですよ。」と伝えています。


そして、(本来痛みに弱い)私自身が鍼を受ける時には、時には顔をしかめながら、緊張で汗をかきながらでも鍼を受けています。


症状改善が期待できるかどうかが重要

一番聞きたい言葉は「先生の鍼は痛くない。ありがとう。」よりも「おかげさまで症状が改善したよ。」です。「痛いか痛くないか」だけに固執して、患者さんを悩ませているものを見落とすことは誰のためにもなりません。まさに「木を見て森を見ず」です。


確かに、「響く鍼」をしたからといって、全ての方の症状が改善できるわけではありません。しかし、「響く鍼」が必要な患者さんに、「響かない鍼」をする理由はどこにもありません。


鍼は薬と違い、肝臓や腎臓に負担をかけません。しかし、そういった性質上、なかには「なんの薬にもならない鍼(意味の無いもの)」を安易な気持ちで提供している鍼灸師もいるはずです。体に害はなくても、時間や金銭面での負担は免れません。


もしあなたが鍼を受けようと思った時には、「痛いか痛くないか」または「痛そうか痛くなさそうか」だけで判断せず、この鍼(この鍼灸師)で「症状改善が期待できるかどうか」を考えて下さい。


最後に

実は、痛くなくやることは簡単です。極端な話ですが、鍼を刺さずに鍼施術をしたふりをすれば、患者さんは痛みを感じることはありません。しかし、それでは本来の鍼とはいえません。


当院では、痛いか痛くないかよりも、出来るだけ効果のある方法を提供することを心がけています。もちろん、鍼に対し不安のある方には寄り添って、徐々に刺激に慣れていけるようにサポートをしています。また、鍼が効きづらい症例の場合は、他の方法(漢方や病院での治療)を紹介しています。

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