top of page

「華陀夾脊穴」と「盤龍刺」で自律神経や五臓の調子を整える?

鍼灸治療で使われている用語には、古来から馴染みのある言葉がふんだんに使われています。なかでも「盤龍刺(はんりゅうし)」という面白い刺し方があります。名前だけ聞くと、非常に難しい印象がありますが、一目見るとすぐに何故この名前なのか?「なーんだそういうことか!」とすぐにわかります。ではどういったものなのでしょうか?

 

読んで字のごとく、「龍」という名前の通り、ドラゴンと関係しています。この盤龍刺ですが、頸から腰まで背骨の脇すぐに左→右→左・・・と交互にツボを取ります。このツボをなぞっていくと背中にドラゴンが昇っているかのように見えます。

 

効能としては、「五臓の調子を整える」であるとか「自律神経を調整する」などと言われていますが、一体なぜそういわれているのでしょうか?

 

まず、経絡経穴的には、背骨の両脇には「華陀夾脊穴(かだきょうせきけつ)」というツボがあります。また背中には上から下に走っている膀胱経という経絡があります。膀胱経には○○兪(例えば心兪とか肺兪とか・・・)というツボがたくさんあるのですが、これは五臓を整える作用があります。また、同じレベル(高さ)にある華陀夾脊穴にも同様の効果が期待できるため、「五臓の調子を整える」ことができると考えられます。

 

そのほかに、解剖生理学的にみて、背骨の際に刺鍼をすることによって自律神経に作用することが出来ると言われています。

 

では、「華陀夾脊穴」と「盤龍刺」で一体どのような違いがあるのか?気になる方もいるかと思います。簡単にいうとほとんど同じといってよいと思います。ただ使用する鍼灸鍼の本数などは単純に倍となるため、刺激量をコントロールする場合(例えば上から下まで全部刺すなど)には「華陀夾脊穴」よりも「盤龍刺」の方が負担が少ないと言えます。

 

例えば、全体的に自律神経を調整したい場合は上から下までまんべんなく刺すため「盤龍刺」を使います。肩こりや首こりなどで肩甲骨の内側が痛む場合などは「華陀夾脊穴」を頸椎~胸椎レベルで使います。頸椎症性神経根症など肩・腕に症状が限局している場合は「華陀夾脊穴」を、同じ頚椎症でも四肢に神経症状がでるような「頚椎症性脊髄症」などの場合は、範囲が広いため「盤龍刺」を使います。

 

伝統医療に関する言葉は、古来からの人の思想と結びつくようにできています。現代のツボの国際表記はナンバーとなっています。漢字圏以外に配慮し、中国語由来の言葉は採用されませんでした。利便性をとるか?伝統を重んじるか?とても難しい所ですね。

最新記事

すべて表示

末梢性顔面神経麻痺において、「単なる神経の機能不全による神経麻痺」なのか、「神経断裂が生じている神経麻痺」なのかでは、治療に対する考え方が大きくことなります。主な臨床症状はどちらも「顔面神経の損傷による表情筋の運動麻痺」ですが、実は性質が大きく異なります。 末梢性顔面神経麻痺の予後判定にはENoG検査が用いられます。これは、非麻痺側と麻痺側を比較し、「神経の活きている割合」を客観的に調べる方法です

末梢性顔面神経麻痺の鍼治療において、麻痺からの回復自体をサポートすることはもちろんですが、表情筋の拘縮等の後遺症を起こさないようにすることも治療目的の一つです。当院では、必要に応じたセルフケアの指導(後遺症予防)を行っています。ただし、すべての症例において、一回二回の施術で劇的に麻痺が改善するというわけではありません。中等症・重症例の場合は動きが出てくるまでに、数カ月掛かることがあります。 人によ

末梢性顔面神経麻痺ではENog検査(誘発筋電図検査、客観評価)と柳原法(表情をつくってもらいながら程度を観察して調べる方法、主観評価)で主に評価を行います。顔面神経麻痺発症から徐々に機能が失われていき、一週間過ぎた辺りがピークとなります。ピークに合わせてENog検査を行い、生きている神経がどの程度か?を評価します。10日~14日程度に行ったENog検査の数値は信頼性が高いと言われています。 末梢性

bottom of page