top of page

触られていると痛みがやわらぐ?

子供のころ、私は今に比べてよく転びました。膝をぶつけたりして、痛くて悲しくて泣きました。すると大体まわりの大人がやってきて「痛いの痛いの飛んでいけ!」ってやってくれたり、撫でさすったりしてくれます。あら不思議痛みが軽くなった気がするものです。でもこれって気のせいでしょうか?


人間が感覚的に痛みを感じるのは、皮膚上にある痛みのセンサーが反応して、その情報を神経という回路を通して、コントロールセンターである脳に通達されるためです。

 

神経は、何種類かあって、痛みを経由するものと、触られた感覚が経由するものなどがあります。例えば、彼らを急行電車(触感覚)と鈍行電車(痛み)としてみましょう。鈍行電車はよく特定の駅に着いたあと、急行電車の通過待ちをしなければいけないことがあります。交通を管理しているシステムがこの電車同士の往来を管理しているわけですが、これと同じようなシステムが私達の体にも存在しています。このシステムを説明したものを「ゲートコントロール理論」と言います。

 

触られた感覚は急行電車として優先的に線路を使用できるため、鈍行電車である痛みは、ここでストップされます。すると、あれ?さっきより痛くないぞ?という現象が起きるわけです。

 

これを治療に応用したものが、テンス/TENS(経皮的電気刺激)というものです。これは簡単にいうと、電気パッドを患部に当てて、表面が痺れているような感覚を起こし、触感覚のセンサーに作用させて痛みを止めるというものです。

 

ただ、これには一つだけ問題があります。例えば、どこか痛いから治療院に出向いて、「電気流しましょう!」と言われたとしましょう。当然上記の方法を痛みのある部位にやるわけですが、普通は痛みが即座に軽減します。利用者からしてみれば、「痛みがすぐ消えた!すごい!」となるかもしれません。でも、これは通電している時にしか効果がないのです。言い換えてみれば、通電後は痛みが戻ります。科学的なトリックです。利用者側は「やっぱり、また明日来よう!」となるかもしれませんし、治療院から「また明日も来てください。」と言われるかもしれません。その時は、どのような治療法なのかしっかり聞いて、納得をしてから継続をしたほうがよいかもしれません。

 

このTENSですが、別に通電しなきゃ痛みがとれないなんて使えないな!というものでもありません。逆にいうと、鎮痛薬を服用して、効果出現までに時間がかかる!早く鎮痛したい!場合とか、今だけでもいいから薬以外で鎮痛したいなどの場合は非常に簡便で有益な方法であると言えます。

 

あの「痛いの痛いの飛んでいけ!」というナデナデもあながち非科学的な鎮痛方法でもないようです。

最新記事

すべて表示

頚椎症に対する遠隔取穴の効果

頚椎症に対する「局所取穴」と「混合取穴(局所+遠隔)」の効果を比較した文献「不同远端取穴针刺治疗颈型颈椎病的临床随机对照试验(和訳:異なった遠隔取穴による頚型頚椎病に対する鍼治療のランダム化比較試験)」[1]を見かけたので読んでみました。...

麻痺に伴う代償運動が及ぼす影響

運動麻痺の回復期を過ぎた後、身体機能が悪化していくことがあります。とくに、不完全治癒の場合、加療を中断した後、一定期間が経つと運動機能の低下が生じ、中断時点よりもより悪くなる傾向にあります。その原因の一つが「代償運動(だいしょううんどう)」によるものです。...

五十肩と訴える症例の考察

何らかの原因によって肩関節周囲の軟部組織に炎症が生じると、激しい痛みが現れ 、夜間痛を伴うことがあります。炎症によって軟部組織に強い損傷が生じると、癒着等による肩関節の可動域制限や拘縮が生じると言われています。 これを、「五十肩(もちろん五十代以外でもなる)」や「肩関節周囲...

bottom of page