足三里への鍼刺激は特異的に側頭葉へ作用している。
足三里とfMRI
足三里は多彩な穴性(効果)を持つツボの一つです。かの松尾芭蕉も足三里にお灸を施していたとされています。前回の記事では、「結核患者やHIV患者へのお灸(足三里)は免疫力向上(CD4)の効果があること(モクサアフリカ)」を書きました。今回は鍼について少し述べていきます。
足三里への鍼刺激は、胃腸の調子を整えたり、痛みを取ったり(鍼麻酔で応用される:)、そして脳の血流量を増加させたりします。鍼灸臨床でもよく使われるツボです。足三里は向うずねにあるツボですが、局所だけに作用するわけではありません。こういった離れた場所への作用には、中枢を介した反射(足三里→脳→効果発現)が必要不可欠です。
東洋医学という名前からか、なにかと「非科学的だ。」「科学的根拠が無い。」と誤解を受けやすい鍼灸療法ですが、近年ではfMRI(functionfunctional magnetic resonance imagingal mri)などの最新画像検査機器によって脳のどのような部位に対して作用しているのか?という疑問を明らかにするような研究が行われています。
研究論文の紹介
fMRIを用いた研究「肖叶玉(2008)手法针灸足三里穴脑内效应磁共振功能成像研究」を紹介します。

この研究では、足三里に鍼をし補法(気を補う手技)を施したグループ(鍼群)とツボ以外の部位に鍼をしたグループ(対照群)のfMRIを分析した結果「鍼群は対照群に比べて、側頭葉に有意に作用していること(P=0.022)」がわかりました。もちろん側頭葉だけではなく、様々な部位で反応が起こることもわかりました。
側頭葉には、深部に海馬という記憶に関係する中枢が存在します。また、聴覚、嗅覚、言語理解に関係する部位です。側頭葉の活動を高めることを目的とした刺鍼には「足三里」がよいのではないか?ということがわかります。
さいごに
脳画像を用いた研究が裏付けるように、足三里への鍼刺激は脳活動を活発にすることがわかっています。「未病ケア」という観点からも鍼を常日頃から取り入れて脳活動を活発にしてみてはいかがでしょうか?