top of page

過活動膀胱や中枢神経障害による泌尿器症状に対し鍼灸療法は有効。

更新日:2019年3月18日

鍼灸療法は、肩こり・腰痛などに対し行うものであると思われていますが、上記症状だけではなく、様々な疾患や症状に対し応用されています。


鍼灸療法は機能性の疾患・症状を改善することが多く、神経因性の泌尿器症状にも一定の有効性が認められています。


鍼灸療法は、ツボや経絡を刺激し遠隔的に効果発現すること以外に、理療としての解剖学的・生理学的な考え方ができます。鍼を直接関連のある神経近傍や骨膜付近に刺入し、響きを伴う刺激を与えることによって調節作用が働き、機能回復が起こります。


過活動膀胱や中枢神経障害に対する鍼の研究報告では、 仙骨部(後面)の骨膜を鍼で直接刺激し、機能調整を図っています。鍼灸療法の利点は、直接刺激することができるという点に付きます。


過活動膀胱では、平均7回の治療にて、切迫性尿失禁9例中5例に著明改善(尿失禁の消失)、2例に改善(尿失禁回数や量の減少)、尿意切迫を主訴 とした2例 の排尿症状 は正常化し、自覚症状の改善率は82%であったと報告されています。


慢性期脊髄損傷の尿失禁では 、4回の治療にて、8例中7例で膀胱容量が有意に増大し, 6例において尿失禁が改善したと報告されています。


上記の研究は、入院患者には毎日1回、通院患者には週1~2回の頻度で鍼施術がなされています。


もちろん、過活動膀胱や脊髄損傷のみならず、脳卒中による泌尿器症状などにも鍼は応用可能です。神経因性の機能失調を調節することに向いています。


泌尿器疾患・症状は生活の質を大幅に下げます。薬物療法などで効果が著しくない場合などでお悩みの方は、鍼灸療法を検討してみてはいかがでしょうか?


参考文献

[1] 北小路 博司, 寺崎 豊博 他 (1995) 過活動性膀胱に対する鍼治療の有用性に関する検討, 日本泌尿器科学会雑誌, 86(10): 1514-1519.

[2] 本城 久司, 北小路 博司 他 (1998) 慢性期脊髄損傷患者の尿失禁に対する鍼治療の試み, 日本泌尿器科学会雑誌, 89(7): 665-669.

最新記事

すべて表示

末梢性顔面神経麻痺において、「単なる神経の機能不全による神経麻痺」なのか、「神経断裂が生じている神経麻痺」なのかでは、治療に対する考え方が大きくことなります。主な臨床症状はどちらも「顔面神経の損傷による表情筋の運動麻痺」ですが、実は性質が大きく異なります。 末梢性顔面神経麻痺の予後判定にはENoG検査が用いられます。これは、非麻痺側と麻痺側を比較し、「神経の活きている割合」を客観的に調べる方法です

末梢性顔面神経麻痺の鍼治療において、麻痺からの回復自体をサポートすることはもちろんですが、表情筋の拘縮等の後遺症を起こさないようにすることも治療目的の一つです。当院では、必要に応じたセルフケアの指導(後遺症予防)を行っています。ただし、すべての症例において、一回二回の施術で劇的に麻痺が改善するというわけではありません。中等症・重症例の場合は動きが出てくるまでに、数カ月掛かることがあります。 人によ

末梢性顔面神経麻痺ではENog検査(誘発筋電図検査、客観評価)と柳原法(表情をつくってもらいながら程度を観察して調べる方法、主観評価)で主に評価を行います。顔面神経麻痺発症から徐々に機能が失われていき、一週間過ぎた辺りがピークとなります。ピークに合わせてENog検査を行い、生きている神経がどの程度か?を評価します。10日~14日程度に行ったENog検査の数値は信頼性が高いと言われています。 末梢性

bottom of page