鍼灸療法は、肩こり・腰痛などに対し行うものであると思われていますが、上記症状だけではなく、様々な疾患や症状に対し応用されています。
鍼灸療法は機能性の疾患・症状を改善することが多く、神経因性の泌尿器症状にも一定の有効性が認められています。
鍼灸療法は、ツボや経絡を刺激し遠隔的に効果発現すること以外に、理療としての解剖学的・生理学的な考え方ができます。鍼を直接関連のある神経近傍や骨膜付近に刺入し、響きを伴う刺激を与えることによって調節作用が働き、機能回復が起こります。
過活動膀胱や中枢神経障害に対する鍼の研究報告では、 仙骨部(後面)の骨膜を鍼で直接刺激し、機能調整を図っています。鍼灸療法の利点は、直接刺激することができるという点に付きます。
過活動膀胱では、平均7回の治療にて、切迫性尿失禁9例中5例に著明改善(尿失禁の消失)、2例に改善(尿失禁回数や量の減少)、尿意切迫を主訴 とした2例 の排尿症状 は正常化し、自覚症状の改善率は82%であったと報告されています。
慢性期脊髄損傷の尿失禁では 、4回の治療にて、8例中7例で膀胱容量が有意に増大し, 6例において尿失禁が改善したと報告されています。
上記の研究は、入院患者には毎日1回、通院患者には週1~2回の頻度で鍼施術がなされています。
もちろん、過活動膀胱や脊髄損傷のみならず、脳卒中による泌尿器症状などにも鍼は応用可能です。神経因性の機能失調を調節することに向いています。
泌尿器疾患・症状は生活の質を大幅に下げます。薬物療法などで効果が著しくない場合などでお悩みの方は、鍼灸療法を検討してみてはいかがでしょうか?
参考文献
[1] 北小路 博司, 寺崎 豊博 他 (1995) 過活動性膀胱に対する鍼治療の有用性に関する検討, 日本泌尿器科学会雑誌, 86(10): 1514-1519.
[2] 本城 久司, 北小路 博司 他 (1998) 慢性期脊髄損傷患者の尿失禁に対する鍼治療の試み, 日本泌尿器科学会雑誌, 89(7): 665-669.