鍼と抜歯後の痛み
鍼は腰痛、肩こりに効くというイメージの方は多いと思います。もちろん鍼の最も応用されているいる分野は「痛み」ですが、腰痛、肩こりだけではなく「抜歯後の痛み(抜歯後疼痛)」などにも応用されています。たまにですが、親知らずを抜いた後、なかなか痛みがとれない、、、といったことで鍼をすることがあります。
どこに鍼をするかというと、口顎周りと手に鍼をしていきます。手では合谷(ごうこく)というツボに鍼をするのですが、経絡の流れを意識し、痛む側と反対側の手の合谷を使用します。刺激としては刺した後に強く大きく捻じる動作(手技)を加えていきます。実は、この合谷というツボには「鎮痛作用」があると言われていて、刺激を加えることによって、脳内から鎮痛物質(脳内モルヒネ様物質)が分泌されることがわかっています。
一般的に、ロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェン(ブルフェン、イブ)などの痛みを抑える機序は、プロスタグランジンという炎症反応の痛みを増強させる物質を抑制によるものですが、合谷刺激による鎮痛機序とは違うことがわかります。
そのほか、口顎周り(局所)の血流改善目的で鍼をしていきます。すると、痛み物質による虚血状態(虚血状態はさらなる痛みを生む)が改善されていくとともに、痛み物質が洗い流されていきます。体表からは、鍼周囲に円形状のフレア(皮膚がピンクになる=血流改善)が確認できるはずです。また、腫れが強い場合は患部をさけて鍼をしていきます。
鍼の効果がすぐ現れる場合は、合谷刺激中や施術直後から痛みがスーと引いていきます。また、痛みの軽減に伴い腫れも引いていきます。実際のところ、痛み止め内服薬では、効果発現まで15分~30分ほどの時間がかかります。内服直後でも痛みに耐えがたい痛みがある場合、内服したあともあまり変化がないような場合に鍼を試される方が多い印象です。
もちろん個人差もあり、鎮痛の程度は人によって様々です。まったくの無痛になる~痛みが気にならなくなる程度まで鎮痛作用が働くことが多々あり、非常に驚かされます。入室時には泣いている方が、何事もなかったかのように退出されたときはホッとするとともに、改めて鍼は鎮痛作用があるんだなと実感する次第です。
ただし、単純な炎症以外(自然治癒が望めるもの以外)、例えば歯科治療中で程度のひどいものであれば原因自体が取り除かれない限り、鍼施術後に痛みの軽減はあっても、再度痛みが戻ってくるということは十分に考えられます。痛みが軽減したあとも慢心せずに必要な治療を継続してください。