鍼には即効性があるか?ないか?
更新日:2019年3月8日
ある人は、、、「鍼は即効性がある!」
また、ある人は、、、「鍼はゆっくり効いていく!」
人によっては、、、「鍼はぜんぜん効かない!」
まったく真逆のことが、まことしやかに言われていますが、実際はどうなのでしょうか?
答えは、「どちらもある」です。
では、即効性がある場合と、ゆっくり効いていく場合を考えてみましょう。
1.個体差:体質や症状による違い
患者さんの体質や、症状によって、経過は千差万別です。当然ですが、年齢が若く健康的な方は自己回復力も強く、よい反応が出やすい傾向にあります。そして、症状が重い場合の方が病状は長引く傾向にあります。
例えば腰痛一つとっても「若年者の軽い筋肉痛」と「加齢による背骨の変形からくる腰痛」では経過が違うといったことが起こりえます。
一般的には、進行していく疾患や加齢による退行性の疾患は、完全に良くなることはほとんどありません。これは、鍼灸療法だけに限った話ではありません。
2.客観性を重視するか?主観性を重視するか?
鍼を刺すと、様々な反応がおこります。
鍼による作用:
1) ゲートコントロール…針刺激が脊髄において痛みを抑制する。
2) エンドルフィン…針刺激がモルヒネ様鎮痛物質の遊離を促し痛みを抑制する。
3) 末梢神経の遮断効果…針刺激が末梢神経の痛みのインパルスを遮断する。
4) 経穴(ツボ)の針刺激による痛覚閾値の上昇による鎮痛効果。
5) 血液循環の改善…筋肉の緊張をゆるめ血行状態を良くする。
参考:https://www.harikyu.or.jp/general/effect.html
しかし、体内で反応が起きていても、主観として感じるかどうか?は別と言えます。鍼の作用が十分に働いている場合でも、実感を得ないからといって、1回で中断してしまう方もいらっしゃいます。薬物療法や運動療法も同じですが、一定期間継続してみることをおすすめします。
3.鍼が得意としている傷病か否か?
鍼は飲み合わせなどもないため、基本的にはほとんどの方に鍼を受けていただくことができます。しかし、だからといって、すべての症状に対し十分な効果を発揮しやすいというわけではありません。
以前も記事にしましたが、「膝関節症の痛みには運動療法よりも鍼が効きやすい。筋力強化には鍼よりも運動療法の方がよい。」といった話がありました。鍼の適応症(上記の場合は”痛み”)に対し、鍼を活用することが一番です。
以上のような理由で、鍼は効く!効かない!などの論争が起きやすいと言えます。
我々鍼灸師は、患者さんの悩める症状に対し、鍼が一番よいのか?または他の療法の方がよいのか?併用すべきかどうか?といったことを考えながら日々臨床を行っています。
少しでも鍼灸に興味がある場合は、気軽にご相談下さい。
参考文献:
越智秀樹, 勝見泰和 他(1995), 変形性膝関節症に対する鍼治療の検討.明治鍼灸医学 17: 7-14