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鍼の保険利用のみ・局所施術のみを取りやめた理由

当院では、過去に「保険利用のみ・局所施術のみの施術コース」を設けたことがあります。原則自費の鍼治療の健康保険利用導入は、料金が極端に抑えられるため、患者さん側に大きなメリットをもたらすと言われていました。数年前は報酬が1300円前後という時もありましたが、現在は1550円です。一割であれば160円程度となるわけです。


よく勘違いされる方がいらっしゃいますが、負担割合によって施術所の報酬がかわることはありません。療養費のレセプト請求を行うことで、7~9割分が保険者から支払われる仕組みです。しかし、一施術分はたったの1550円で、療養費のレセプト請求という手間は毎月かかります。なかには、患者さんが施術所に黙って併療してしまった、、、という場合は残念ながらスムーズな支払いが行われないなどのトラブルも生じます。


保険だけで施術を行うとなると、1550円のうちから衛生材料費などの経費を負担しなければいけません。施術報酬が少なければ少ないだけ経費の占める割合は高くなります。そうなると、時間をかけた施術、時間をかけた対応、本数を使う施術、上質な鍼の使用などは出来ません。もちろん、着替え時間なども全部含まれます。


よく理学療法のリハビリと比較されますが、鍼灸の報酬をリハビリに換算すると本来の施術時間は10分程度しか割り当てることが出来ません。問診・着替え時間を除くと、5分程度しか残りません。これでは十分な施術とは言えません。いわゆる安かろう悪かろうでしか対応ができないわけです。健康保険の理念である最低限の医療保障としては十分ではありますが、理想の鍼治療とは大きな差があると言えます。


また、鍼の施術には部位という概念があまりありません。健康保険の適応症も傷病単位であり、健康保険の報酬も何か所の部位でいくらではなく、一術(鍼または灸)二術(鍼灸併用)となっています。そのため、なかなか部位の区分分けが難しくトラブルの原因となること、説明に時間を割かなければいけないことなどから、当院では自費も含めて局所施術は廃止としました。


そのほかに、当院では予約制となっていることから、予約枠の確保や予約電話の対応なども行う必要があります。当日に予約時間変更・キャンセル・無断キャンセルが発生すると実質二枠分が消費されてしまいます。そういった面から鑑みて、保険のみ・局所のみのコースは予約制と非常に相性が悪いことがわかりました。


当院では普及を目的に、予約制で30分前後の施術時間や手間をかけて「保険のみ・局所のみ」を診ていましたが、いわゆる”安かろう良かろう”では継続することが難しくなりました。こういった事情から、保険利用のみ・局所施術のみを取りやめとしています。逆に言うと、保険のみ・局所のみを取り扱っていた期間に来院された方は、本来の保険治療以上の内容(違反はしていない)で鍼を受けたと考えて差し支えありません。ご理解頂けると幸いです。

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