はじめに
鍼療法は、主に金属製の細い鍼を体内に刺入れて刺激をすることによって症状改善を図ります。もちろん、生体反応を引き起こすことによって症状改善を図るわけですから、鍼にも副作用が存在します。
鍼灸の副作用とは?
筑波技術大学保健科学部付属東西医学統合医療センターの調べによると、主な副作用は以下のとおりとなっています。
参考元:筑波技術大学保健科学部付属東西医学統合医療センター
http://www.k.tsukuba-tech.ac.jp/cl/section/history
全身の副作用としては、疲労感・倦怠感がもっとも多く、ついで眠気と主訴の一時的悪化が起こりやすいようです。頻度は少ないですが、めまい・ふらつき、気分不良・嘔吐、頭痛も起こる可能性があります。
局所性の有害反応は、微量の出血が最も多く、施術中・施術後の痛みや青あざ(皮下出血・皮下血腫)があるようです。
副作用を避けるためには
副作用を避けるためには刺激量を調節することが重要です。めまい・ふらつき、気分不調・嘔吐などは、立ったままや座ったままの姿勢で施術を受けると起こりやすいため、一般的には寝た状態で鍼をします。とくに初めてで緊張している場合や空腹時、寝不足などでは注意が必要です。
よく「鍼を受けて気分が悪くなったことがある」「鍼を受けて貧血気味になったことがある」といった話を聞くことがあります。詳しく話を聞いてみると、やはり座ったままの姿勢で鍼を受けておきてしまった事例ということが多々あります。
また、鍼を受けて具合が悪くなった場合でも、一過性の脳貧血(迷走神経反射)のため、20分程度ベッドの上で安静にしていれば徐々に体調が回復していきます。
また、鍼を受ける際は、空腹をさけたり、寝不足時には術者にその旨を伝えることが重要です。
出血などの有害反応
鍼を体内に刺す性質上、出血などの有害反応は術者の腕に関係なく起こりえます。皮下にある毛細血管は表面から見ることが出来ないため、避けることが困難です。とくに広範囲にわたる症状で鍼の本数が増えるような場合は、出血の可能性が高まります。
施術者は鍼を抜く際に、出血を予防するために綿花で圧迫をしたり、全体の鍼を抜いた後に皮下出血が起きていないか、鍼の抜き忘れがないかなどの再確認をします。
皮下で持続出血をしている場合は局所が盛り上がったようになり、触診で確認ができます。その時には再度綿花で圧迫することによって皮下出血は再回収されます。青あざになっても数週間程度で消退するため心配は不要です。
鍼の調節作用は薬とは少し違う
鍼の刺激によってホメオスタシス(生体恒常性:正常に戻そうとする反応)が働き、健康な状態に戻そうとしていきます。そのため、便秘であっても下痢であっても、お腹の調子を整える際には同じ整腸のツボをつかいます。
薬のように、症状に合わせて便秘であれば腸壁から水分を出す薬を使ったり、下痢であれば腸管運動を抑制する薬を用途に合わせて処方しますが、鍼にはこういった一方向だけに強烈に作用するといったことはなく、便秘に鍼をしたらもっと便秘になってしまうということはありません。
飲み合わせなどの心配もないため薬との併用も!
鍼は、薬とぶつかる「飲み合わせ」の問題もありません。昨今関心の高い高齢者の多剤服用による副作用(転倒・ふらつき、ものわすれ、うつ、せん妄、食欲低下、排尿障害、便秘など)を避けるためにも、鍼を併用して副作用リスク低減を図ることも重要です。
高齢者は代謝などが低下しているため薬が体内に残留しやすく、効きすぎてしまうことがあります。とくに ふらつき・転倒は薬を5つ以上使う高齢者に起きやすいと言われています。転倒から足や腰の骨を折って健康状態を著しく損なうといったことも考えられるため注意が必要です。
最後に
鍼の副作用は、薬と違い体内に長期残留し依存性や効果を高めたり、代謝するために腎臓や肝臓に負担をかけるといったものではありません。一時的な迷走神経反射や鍼の性質による出血がおもな原因となっています。どちらも身体に危険を及ぼすことはなく、重篤な結果をまねくことはありません。
ご自身が鍼を受けるさいに副作用を考慮することも大切ですが、過度に心配するよりも、鍼療法の良い面(自然な調節作用や薬との併用可能など)にも目を向けて、症状や体質に合わせて適宜選択&利用することが大切です。
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