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鍼をした場所の発赤は血流改善の証

鍼をした場所を中心に発赤が出る反応を「フレア反応」と言います。いわゆる血行が改善した状態です。鍼刺激を受けた受容器からの「痛みの信号」が軸索を伝わり、軸索の分岐部から逆行して戻ってます。この際にCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)やSP(痛み物質)といった物質が放出されて血管拡張が起きます。この結果フレア(皮膚の発赤)とともに血流改善が起きるわけです。人によってフレア反応の出方は人によって様々ですが、反応が出やすい場合は肉眼ではっきりと確認することが出来ます。


軸索反射は痛みの反射と関係があるため、侵害性刺激(組織を実質的に傷害するか、あるいは傷つける可能性のある刺激)である鍼の刺激が理にかなっているとも言えますし、「痛み」として必要十分な刺激量が必要であるとも言えます。患者さんが痛みの信号を感じる状態を、「鍼感がある」「得気がある」というように呼び、この鍼感や得気は重要な刺激の指標となっています。また、一般的に反応は、有訴者のほうがより強いことがわかっています。これは、いわゆる調整作用が働くためと言われています(ホメオスタシス)。


人によっては、「鍼をしたところが赤くなった、何か危ないことが起きているのではないか、、、」「鍼をしたところが赤くなった、鍼灸師の腕が悪いのではないか、、、」と感じてしまう方もいるかもしれません。このフレア反応が起きている場合は、「血流が改善する良好な反応」と捉えるべきもので、「痛みの緩和(痛み物質の除去)」などが期待できるものです。


鍼をした後にすこし重だるさが残った、すこし熱っぽい、これも血流改善の結果です。一般的に一日二日程度で元に戻るはずです。逆に言うと、「痛くないけど何も感じなかった」というような場合は、刺激量が適切ではないため注意が必要です。とくに、複数回鍼を受けても「まったく何も感じない」ような場合は、治療成績もいまいちであることがあります(いわゆる薬にも毒にもならない)。


鍼を慣れるために初めは低刺激から、、、というのは大いに賛成です。しかし、こういった鍼の作用機序を理解した上で、必要な刺激量に徐々に慣れていくようにして下さい。これが、鍼治療の治療成績をあげる一つのポイントであると感じています。

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