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鍼を刺すと反対側の皮膚温も上がる。

鍼を刺すと、局所の血流量が改善されます。これは「軸索反射」という反応です。「鍼の刺激(痛み刺激)」による信号が神経を介して伝わると、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド )という物質が局所で放出された結果、血管拡張がおこり、血流が改善します。


「軸索反射」は臨床ではどのような場面で応用するのでしょうか?例えば「痛みの悪循環」と言って、何らかの原因(五十肩や腰痛症など)によって「痛み物質」が局所に産生されて、さらに局所的な血流低下を起こし、痛み物質が産生されて、また・・・といった障害が起きた際には、「軸索反射」を応用して「痛み物質の除去」を行います。血流が改善すると「痛み物質」は流されていき、そして痛みが消えていきます。


「痛みの悪循環」の解除には、問題のある場所の血流量を改善する必要があるため、体表から電気を流したり、温めたりだけではなかなか難しい場合もあります。厚めのお肉を強火のフライパンで熱しても表面が焦げるだけで、中まで火を通すことは容易ではないのと同じです。鍼灸鍼を上手に患部に導けば局所血流量が上がり、痛みが取れる(血流量が上がる)といったことが起きます。


ここまでは、よく知られていることですが、実は鍼の刺激は、刺した場所(局所)だけの血流量や温度を上げるわけではありません。例えば以下の動画のように、合谷(HEGU, LI4)という母指球筋(親指付け根の筋肉)上にあるツボに鍼を刺すと、刺激側の手指皮膚温だけではなく対側(逆側)にも同じような現象が出現します。


参考動画元: Fabiana Freire- MedThermo 1) " Effects of Acupuncture on HEGU(LI4) by Infrared Thermography

https://www.youtube.com/watch?v=0WDb5U1GWaM

2) Effect of Acupuncture on HEGU (LI4) by Infrared Thermography

https://www.youtube.com/watch?v=OROOdTujA_Q

鍼刺激は、単純な「局所血流量の改善」だけではなく、上記のように中枢(脳)を介した体側への反射や、内臓への反射(例:足三里刺激による腸の蠕動運動活性化)など様々な反射を介して作用が発現します。


鍼は薬との飲みあわせの問題などもありません。「痛み」や「冷え」がある場合に鍼はいかがでしょうか?

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