今年から鍼灸も「受領委任制度」が導入されました。受領委任制度とは、保険医療機関のように、負担割合分(1割~3割)を窓口で支払う形の領収方法です。原則償還払い(窓口一旦立替払い)から一歩進んだ形となりました。
新制度移行に伴い、様々な面で変更が起こりました。鍼灸での健康保険利用には、「医師の同意」が必須条件ですが、新制度移行に伴い以下のとおりとなりました。
同意に関する変更点
・旧)口頭同意可→新)文書による同意必須(要同意書)
・同意による保険適応可能期間が6ヶ月(旧:3ヶ月)に延長
鍼灸での保険適応範囲
1)特定6傷病
・リウマチ
・神経痛
・腰痛症
・五十肩
・頚腕症候群
・頸椎捻挫後遺症(ムチウチ)
2)その他
・変形性膝関節症
・背部痛
etc....※保険者判断による
よくある質問
健康保険利用に関し、さまざまな質問をお受けします。よければ以下のQ&Aを参考にして下さい。
Q、なぜ保険適応範囲がこんなに狭いのか?病院や整骨院ではなんでも保険が利いたけれど・・・
A、鍼灸院や整骨院は、保険医療機関(病院・クリニック)ではありません。そのため、特定の保険適応範囲以外は原則自費です。もちろん整骨院も鍼灸院と同様です。なんでも保険が利くとはかぎりません。
整骨院での保険適応症:
・打撲、捻挫
・脱臼、骨折(要医師の同意)
※鍼灸との保険適応範囲は重複しない
Q.整骨院では同意書が必要ないけれど、鍼灸ではなぜ必要なのか?
A.鍼灸の保険適応症は慢性疾患が主になります。緊急性を要さず、医療先行(病院での治療が先)という前提があります。同意書の裏面にも記載されているように、「保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、保険者は保険医による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えないもの~」の原則にのっとった保険適応となります。
また、整骨院での保険適応範囲は「急性外傷(打撲・捻挫など)」となっています。「応急手当」となっており、「打撲、捻挫」は同意書不要、「脱臼・骨折」は要同意書となっています。急性外傷のため、一般的に3ヶ月をこえての加療や、慢性疾患(変形性腰椎症の悪化にともなう腰痛など)や未病(単なる肩こりなど)に対する施術は保険適応とはなりません。※急性外傷のため「原因不明」「負傷理由不詳」も不可
Q.病院でも湿布や鎮痛剤をもらいながら、鍼灸も保険利用したいが可能か?
A.原則的に健康保険利用による「併療」は「不可」となります。どちらか片方を選ぶ必要があります。一般的な保険者判断では、「医療先行」となりますので、「病院での治療が優先」されます。※リハビリ(運動療法)との「併療」も「不可」です。
併用する場合:
・病院での保険治療を選択する場合→鍼灸は自費
・鍼灸の保険施術を選択する場合→病院では自費を選択するか、薬局でOTC(一般薬)を購入し使用する
※治療行為のみ併療不可。診断や評価は保険者判断によるが、おおむね認められている
Q.病院のように、保険適応の場合は同一日・同一部位(傷病)への自費併療は不可かどうか?
A.健康保険利用による鍼灸は「療養費(病院の医療費ではない)」という区分になり、併療が認められています。また、同一傷病以外のもの(保険適応外傷病)に対する施術を同時に行った場合は併療ではないため、これにあたりません。
当院で混合施術を受けた場合は、以下のとおりとなります。※当院の場合
混合の場合:
・内容は自費と同じ
・規定の自費料金(1コマ3000円~)のうち保険料金分を引いた差分が自費負担
Q.受領委任制度に移行したはずなのに、なぜ保険者や鍼灸院(施術所)によってはまだ償還払いのみの取り扱いなのか?
A.今年から受領委任制度が開始しました。しかし、何らかの事情(各保険じゃの意向)によって制度自体に参加していない保険者が存在します。また、同様の理由で制度参加をしていない施術所もあります。※当院も当面は償還払いのみ取り扱います。
Q.なぜ保険鍼灸と自費鍼灸の内容が違うのか?保険よりも自費の方が手厚いのはなぜ?
A.自費鍼灸の場合、制度上の制約はありません。そのため施術所の意向によって料金体系や内容が決められています。しかし、保険鍼灸の場合は、料金や適応方法などに決まりがあり、制度上の制約を受けます。そのため、内容が異なります。保険鍼灸の内容を自費同様に変更したい場合は、混合と同じように追加料金を払うなど一部自費負担が必要です。
Q.鍼灸も健康保険利用可能のはずなのに、なぜ施術所によっては自費しかないのか?
A.施術所は保険医療機関ではありません。原則自費となります。保険に関しても、施術所の意向によって「健康保険利用による鍼灸を取り扱うかどうか」の違いがあります。また、健康保険利用が可能であっても、保険鍼灸の規定料金(1540円~)での施術はせず、一部保険適応(混合と一緒)として取り扱う施術所もあります。
Q.通院可能だが、往診してもらった方が楽だから、健康保険利用で往診してもらいたい。
A.通院が可能な場合、鍼灸施術は保険利用可能となりますが、往療料は自費となります。以下の場合は、健康保険利用による往診が可能です。
健康保険利用による往療料算定の要件:
・同意書に「要往診」の記載がある場合
・施術所から16kmを超えない
最後に
鍼灸も健康保険利用可能ですが、制度上の制約などによって利用しづらさは残るかと思います。しかし、上手に活用することによって、医療の幅が広がるはずです。また、煩雑な手続き(償還払い)も一度行ってしまえば、慣れてしまう場合がほとんどです。手続き関連で中途断念されるという方は今のところいません。
保険鍼灸に関して、質問や相談などがあれば気軽にご相談下さい。