鍼灸に限らず、気持ちよさそうだから○○療法にしようといった考えはおすすめしません。
鍼は痛そうだし、灸は熱そうだから、鍼灸は避けて「気持ちよさそうな○○療法」にしようといった考え方はおすすめしません。とくにカイロや整体などの無資格マッサージは法律上は「気持ちいいこと(リラクゼーション)」しか出来ないのです。症状が改善するということはほとんどありえません。施術者にかぎらず、患者さんには特に注意していただきたいと思っています。本来の症状改善という目的から逸脱していくことは遠回りにしかなりません。
マッサージ(無免許慰安マッサージ除く)、はり、きゅう、その他療法を含めて、国家資格施術者の根底にあるのは「この瞬間気持ちいいかどうか」ではありません。「いかに悩める症状を改善するかどうか?」この1点に尽きるのです。
病院に行って、薬をもらって、時には点滴を受けることもあるかと思います。薬を飲む目的は?点滴を受ける目的は?それはなぜでしょう?つらい症状を緩和させることが目的ではないでしょうか?「注射は嫌だから、経口でインフルエンザの予防接種をしたい」とは思わないはずです。
鍼も同じです。「気持ちいいこと」と「改善すること」は決してイコールではありません。時にはマイルドな施術になるかもしれませんし、時には強めな刺激を伴う施術になるかもしれません。それは患者さんの一人一人の症状によって変わってきます。
昨今では、施術者は愛護的に診療にあたるべきだと言われています。愛護的という意味は、リラクゼーションをメインとした「施術面での気持ちよさを追求する」ことではありません。「最小限の負担で改善を目指す」こと、不必要な検査や介入はさけて、適切な施術をおこなうということです。勘違いされやすいですが、適切な施術とは「無痛の施術」というわけではありません。
当院で行っている「醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)」という処方があります。この処方は脳卒中後遺症改善のために中国天津で開発されたもので、強刺激です。そのため「無痛」ではありません。しかし、1970年代より中国はもとより世界的に普及し、海外から中国へ渡り脳卒中後遺症を治療している方も多くいらっしゃいます。こういった現象は「有痛無痛」が本来の目的ではなく、改善を目指すことが重要であるということを裏付けています。
鍼施術はリラクゼーションではありません。国家資格保有者が改善を目的にして施術を行っています。鍼灸に限らず、「有痛無痛」だけに着目せず、研究がされているか、適切に運用されているか、実際はどうなのかといったことを考えながら選択していくべきだと思います。