頸腕症候群
鍼灸の適応症の一つに「頸腕症候群(けいわんしょうこうぐん)」という傷病があります。頸腕症候群は、首から肩・腕、そして手にかけての痛み、しびれ、筋力低下、循環障害などの自覚症状を呈する病気で原因が特定できないものを指します。肩こりなどの筋疲労から始まることが多く、長時間のデスクワークなど姿勢保持によって発症することもあります。
鍼灸と頸腕症候群
単なる筋疲労や肩こりでは「保険適応外」ではないか?と考える方もいらっしゃいます。じつは、①鍼灸以外に、②柔道整復(整骨院、接骨院)、③按摩マッサージ指圧(無資格:整体、カイロ、揉みほぐしではなく)も一部傷病に対し健康保険利用できますが、「頸腕症候群」に対して健康保険利用できるのは「鍼灸だけ」です。
適応外の理由:
1) 柔道整復(整骨院、接骨院):急性外傷(打撲、捻挫、脱臼、骨折、)が保険適応
2) 按摩マッサージ指圧:筋麻痺や筋拘縮が保険適応
上記のとおり、適応症が異なります。
そのため、肩こりや筋疲労などを伴う頸腕症候群に対し、鍼灸を用いない方法で健康保険を利用することは違法です。また、「医師の同意書」を事前に必要としない場合(柔道整復:捻挫、打撲は不要)も同様に違法です(鍼灸は要医師の同意書)。
鍼による施術
鍼をすると、血流が改善し、疲労物質や疼痛物質を流していきます。筋疲労や過緊張などオーバーユースに伴うものは筋肉全体に刺鍼し、硬結(こり)がある場合は、コリを鍼先で刺激し「局所単収縮反応(LTR)」という反応を起こします。LTRが起きるとコリは消失し、本来の柔らかさを取り戻します。とくに、肩(僧帽筋)はLTR(筋肉の自発的収縮)が起こりやすく、鍼による効果を実感しやすいと思います。
肩(僧帽筋)への鍼:
Dry Needling twitch response
健康保険利用時の注意点
同一傷病での治療を医療保険機関(病院、診療所)で受けている場合(自費は含まない)は、「治療優先の原則(併療不可)」に従い、健康保険利用が出来ません。
内服薬や湿布が○○週間分(または○○日分)出ている場合はその期間が過ぎた後から、リハビリでは中断した後から、健康保険利用による鍼灸が行えます。検査や診察は治療期間に含まれないため、併療扱いとはなりません。
また、一般的には症状が重くなるまでがまんせずに、発症すぐから鍼灸などの治療を行うことが重要です。症状が軽いうちの方が改善しやすい傾向にあります。また、症状が重くなると併療になる可能性が高くなるため、権衡保険利用を考えている方は、早め早めのケアをおすすめしています。
さいごに
頸腕症候群は、現代病や職業病に近いと言われています。筋肉自体が循環障害などを起こすと本来の機能(クッション性や姿勢保持力)を失い、頚椎(背骨)などへの負荷が高まります。悪化すると作業効率やQOLを低下させたり、頚椎症などを引き起こしたりします。一回だけで治すというよりも、定期的なメンテナンスやケアを行っていくことが重要です。興味のある方は、鍼灸を取り入れてみてはいかがでしょうか?
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